それまでに何人ものモンスター上司について、ある程度の経験を積んできたはずだったのですが、それらの経験が瞬時に吹き飛んでしまうくらいの過酷な日々が始まりました。 希望する飛行機が満席で取れないと言おうものなら、眉毛をピッと上げて一喝。
「満席でチケットが取れないというのは君の問題だろう。私には一切関係ない。君に給料を支払う理由はただ1つ、私の望み『全て』を叶えることだ。どうにかしろ!」
また、別のときには「今すぐこの情報がほしい」と。でも、その情報を持っている本人は飛行機の中で、あと6時間は地上に降り立ちません。そんな状況を説明しても、ボスには通用しないのです。今必要なものは、今。「自分は会社から高いお金をもらって働いている。その会社のお金と時間を、君に補填(ほてん)できるのか?」というわけです。
彼は、気に入らなければ自分の上司からの呼び出しでも動きません。
「私が上司に会いに行かなくて困るのは君だよ。『秘書から聞いていなかった』と言えば済むのだからね。さあ、どうする?」
鷹のような鋭い目でこう言います。 要は、「自分も相手も納得できる状況を作り出せ」ということです。一見、傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な言動のようですが、彼の言うことは常に一本筋が通って、冷静に考えると実は正しいのです。
ですから、誰も文句が言えない――故にモンスターは、モンスターであり続けるのです。
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