迫るマイナンバー開始 企業は何をすればいい?あと半年(3/4 ページ)

» 2015年07月02日 08時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

個人番号カード以外でもOK、だが手間はかかる

 では、どのようなやり方が好ましいのか。確認作業で最も手間がかからないのは「個人番号カード」を提示してもらうことだ。個人番号カードであれば、2つの約束事を一度でクリアできる。

 個人番号カードというのは、前述の通知カードとは異なるので要注意。個人番号カードは、通知カードと引き替えに本人が市区町村に交付を申請することで発行されるICチップを内蔵したカードだ。本人の氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバーの記載に加えて顔写真が付く。

個人番号カードの表面と裏面のイメージ。発行手数料は無料で、1回の来庁で交付が受けられる予定。申請時にパスワードを決めなければならない。横浜市市民局のホームページから抜粋 個人番号カードの表面と裏面のイメージ。発行手数料は無料で、1回の来庁で交付が受けられる予定。申請時にパスワードを決めなければならない。横浜市市民局のホームページから抜粋

 実は、顔写真が本人確認業務において大きなポイントとなる。特に身元確認においては、通知カードによる番号確認と併せて、原則として、官公庁が発行した顔写真付きの各種身分証明書の確認が必須とされる。市区町村が発行する個人番号カードは、マイナンバーと写真が掲載されているので、それ単体で本人確認要件を満たしているのだ。

 個人番号カードは、市区町村の窓口に出向かなければ発行してもらえないので、すべての従業員が所持しているとは限らない。また、交付業務は、来年1月以降開始予定なので、当面は窓口や事務処理が混雑することが予想される。従って、交付を希望する人が直ちに所持できるというものでもなさそうだ。

 ただし、個人番号カードがない場合でも、ほかの方法で2つの約束事を実施すればいい。1つは、市区町村が発行したマイナンバーが記載された書類の確認。もう1つは、官公庁が発行した顔写真付きの各種身分証明書の確認である。

従業員からマイナンバーの提供を受ける際、厳格な本人確認が求められる 従業員からマイナンバーの提供を受ける際、厳格な本人確認が求められる

 例えば、従業員から通知カードや住民票(マイナンバー記載のもの)を提示してもらえば番号確認は完了だ。身元確認は、運転免許証、パスポート、身体障害者手帳、無線従事者免許証などの、写真付きの証明書を確認すればよい。

 このように、従業員の本人確認は、手間がかかることが予想されるもの、必要書類が揃ってさえいれば実施可能なので、プロセスそのものは比較的シンプルだ。やるべきことを粛々と行えば良い。だが、従業員の扶養家族のマイナンバー取得に関しては、ケースバイケースの対応が迫られる場合がある。

 例えば、年末調整の際の扶養家族のマイナンバーは、扶養家族が直接事業主に提供する必要はない。従業員が事業主に提供すればよいことになっている。ただ、従業員は「個人番号関係事務実施者」という立場で扶養家族の本人確認義務を負っている。つまり、家族の分は従業員がちゃんと確認してから事業主に知らせなさい、というわけだ。この場合、事業主に対し扶養家族分の個人番号カードなどの証明書を提示する必要はない。

 一方、従業員の妻が、国民年金の第3号被保険者の届け出を事業主に行う場合は事情が異なる。年金用語などで「サラリーマンの妻」などと呼ばれる状況への対応だ。この場合は、事業主が妻の本人確認を行う必要があるのだが、制度上は「妻の代理人」という形で従業員本人が代わりに事業主にマイナンバーを提供することが認められている。

 事業主からすると、代理人から提供を受けることになるので、(1)妻の署名の入った委任状、(2)妻本人の個人番号カードや通知カード(写しでOK)、(3)代理人(従業員)の個人番号カードや運転免許証などの確認を実施する必要がある。

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