ヒットの香りがプンプン漂う「ザ・トースター」は、どのようにして完成したのか水曜インタビュー劇場(トースター公演)(2/7 ページ)

» 2015年07月01日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

コンセプトは「世界一おいしいトーストを再現させる」

バルミューダの寺尾玄社長

土肥: ザ・トースターの最大の特徴は、スチームテクノロジーと温度制御。これまでのトースターにはなかった機能を搭載することで、パンの表面はさっくり焼けて香ばしく、内部は水分を閉じ込めてふわふわ、の食感を実現されました。

 商品開発のきっかけは、社内行事で行われたバーベキューだそうですね。その日はどしゃぶりの雨だったのにもかかわらず、せっかく準備をしたので決行。社員の1人が炭火でパンを焼いたところ、とてもおいしかった。そこから研究が始まったそうですね。ああでもない、こうでもない、と試行錯誤を繰り返して、終わってみれば5000枚のパンを食べられたそうで。

寺尾: バーベキューのときに食べた、あのおいしいパンをなかなか再現できませんでした。ひょっとしたら、どしゃ降りの雨がパンをおいしくさせたのではないか? と推測して、有名なパン屋に弟子入りしました。そこで、温度調節と水分調節の大切さを学び、商品を完成させることができました。

土肥: いきなり、商品が完成しちゃいましたね。この流れだと取材が1分で終わってしまうので、もう少し詳しく教えていただけますか(汗)。バーベーキューのときに食べたパンがおいしくて「この味を再現できるトースターをつくろう」となった。その後は、どういったことをされたのでしょうか? バルミューダはこれまでオシャレな家電を開発されているので、やはりデザインから始めるのですか?

寺尾: いえいえ、まずは「コンセプト」を決めなければいけません。何をお客さまに提供できるのか。この段階では、商品のことは考えていません。いまの時代は、モノを買うことではなく、“体験を買う”ことだと思っています。モノやサービスを使うことで、どういった体験ができるのか。そこに興味があるので「ものすごいトースターを完成させました!」では、なかなか通用しません。体験を提供する。その体験のために、道具をつくる――といった順序なんです。

 今回のコンセプトは「世界一おいしいトーストを再現させる」こと。そのためには、何をすればいいのか。どういった技術が必要なのか。アイデアを出せるだけ出しました。そして、その中のどれがいいのか、仮説を立てて、次に実験を行いました。

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