それからほどなく、デービッドさんのレポートが正しかったことが分かると、彼を批判していた人たちは、そんなことなどまるでなかったような顔をして銀行の怠慢経営を批判した。
つまり、数字に基づいたロジックより、「いくらなんでも日本の銀行がそんなにいい加減なわけないだろ」という「ふわっとした話」に人々がどっと押し寄せるということを、デービッドさんは身をもって経験したということだ。
では、あれから20年近くを経て、日本人のwoolly thinkingは変わったのかというと、「それほど変わっていない」とデービッドさんは指摘する。その象徴が報道である。デービッドさんはNHKのニュースが好きだ。その理由は、多くの日本人が思っているように「中立公平」だからではなく「興味深い」からだという。
例えば、景気が後退したというニュースを報道する。何がどのように後退したのかということを細かく報じるのではなく、小さな町工場の経営者にカメラを向けて「もう潰れそうだ」と言わせる。
今回の景気後退の以前から縮小している産業にクローズアップして、「ほら、こんなに景気は悪くなってますよ」ということを一生懸命伝える。ロジックに重きを置く英国人のなかでもアナリストという数字を客観的に分析してきた人物だけに、経済ニュースを「ふわっとした話」にすりかえることが不可解だという。
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