ビールのアイコンを揺るがす、米国ビール業界の異変来週話題になるハナシ(4/4 ページ)

» 2015年06月29日 08時00分 公開
[藤井薫ITmedia]
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勢いが止まりそうにない米国のクラフトビール

 ともかく注目度の高まっているクラフトビールだが、実は1956年にはわずか1軒しかクラフトビールの醸造所は存在しなかった。サンフランシスコに「Anchor Brewery(アンカー・ブルワリー)」という醸造所があったが、倒産寸前の状況に陥っていた。しかし、約50年前にこのブルワリーを買い取り、クラフトビールのムーブメントの礎を築いた人物が、Fritz Maytag(フリッツ・メイタグ)という人物だ。

 もちろん、それ以前にもビールの醸造所は全米に数多く存在していた。だが、小規模で独立していて、高品質な原料を使い伝統的な製造方法にこだわった「クラフトビール」というカテゴリーを築いたのは彼だ。その職人気質にインスパイアされた多くの醸造家が、その後、クラフトビールの文化を継承している。その結果、2014年にはクラフトビールの醸造所が3418軒にも拡大している。

 クラフトビールの勢いは、実は米国にとどまらない。英国にも飛び火している。英国人の知人によれば、「米国の影響を受けて、クラフトビールの醸造所が増えている」という。さらに、英国のリカーショップでも「シエラ・ネバダ」や「サミュエル・アダムズ」などのボトルを取り扱っており、若い世代が好んで買っているという。

 米国でクラフトビールの醸造所が一気に増えたのはここ数年のことだ。だが、まだまだその勢いが止まりそうにない米国のクラフトビール人気は、今後、米国ビールのアイコンをも変えてしまうかもしれない。

「シエラ・ネバダ」のペール・エール(左)とクラフトビールのブランドの中でも特に有名で売れている「サミュエル・アダムズ」のボストンラガー

著者プロフィール:

藤井薫(ふじい・かおる)

 大学を卒業後、広告代理店や出版社を経てライターに。

 『POPEYE』『an・an』(マガジンハウス)や『GLAMOROUS(グラマラス)』(講談社)などで、ファッション、ビューティ、ビジネスなど幅広い記事をカバー。日本と海外を頻繁に行き来して、海外トレンドを中心に情報発信している。

 そんな思いをベースに、世界の企業動向や経営哲学をはじめ、それをとりまくカルチャーやトレンドなどを中心にして、思わず誰かに言いたくなるようなネタを提供していくコラムです。


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