「言い間違い、聞き違い」をなくすために、パイロットは何をしているのか水曜インタビュー劇場(パイロット公演)(1/5 ページ)

» 2015年06月24日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

水曜インタビュー劇場(パイロット公演):

 パイロットになるのはたくさんの試験があって、それをパスしなければいけない。また、視力、聴力、運動機能など身体検査を通過し、副操縦士になるのに平均5年、機長になるには10〜15年かかると言われている。数々の難関をくぐり抜けたパイロットは、コミュニケーション能力が高いのではないだろうか。地上で働くビジネスパーソンにとっても参考になる話を聞けるのではないだろうか。

 そんな興味がわいてきたので、JALに問い合わせてみたところ「数年前にあるプログラムを導入して、パイロットのコミュニケーション能力を高めています」とのこと。パイロットはどんな教育を受け、どんな判断・決断をしているのか。JALの現役パイロット(777機長)でありながら、飛行訓練の教官をされている塚本裕司さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。

 →えっ、予定通りに飛んでいない? 機内で何をしているのか、パイロットに聞いてきた(前編)

 →本記事、後編


国会の答弁はダメ

土肥: 前回、パイロットの仕事というのは“状況を判断して決断する”――この連続だという話をうかがいました。コミュニケーションのミスをなくすために、パイロットに言語教育のプログラムを導入されたそうですね。どんなプログラムなのか、詳しく教えていただけますか?

塚本: 「つくば言語技術研究所」というところがあって、そこは論理的な思考力を育てる環境が必要だとして、欧米を中心に展開している“language arts”を取り入れられました。弊社は「パイロットにもより質の高い会話が必要だ」と認識していましたので、2012年に言語教育技術の研修を導入しました。

 どんなことをやっているかというと、例えば「問答ゲーム」によって対話の基本を習得しています。ひとりが質問をして、もうひとりがその質問に答えるだけなのですが、そのときに「結論→理由→まとめ」という順序で話さなければいけないルールがあるんですよ。

土肥: 「なーんだ、簡単じゃないか」と思われた読者も多いかもしれませんが、意外と難しいのでは。ついつい、理由から言ってしまいそうですね。

(出典:日本航空)

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