続編準備中? 少年A『絶歌』の社会的意義スピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2015年06月23日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

次の戦略は「続編」?

 このような戦略をとる太田出版としては当然「次」も考えているはずだ。そう、続編である。

 書評などでいろいろな方がご指摘している通り、『絶歌』はほとんど我々が知りたいと思うような内容は書かれていない。誰かが「中ニ病」と評していたが、自分がいかに苦しいかということだけが、有名小説家を意識したようなナルシスティクな文体で延々と綴られているだけで、肝心要の性的サディズムをもつにいたった経緯や、「病」の遠因でもあるとされた母親との関係など、自身に都合の悪い話はゴソッと抜けているのだ。版元ですらも、「彼の手記には今にいたるも彼自身が抱える幼さや考えの甘さもあります」(参照リンク)と認めるように、内面をさらけ出すとは言い難い内容なのだ。

 ただ、こういう“読後感の悪さ”も商機へ結びつけることができる。「絶歌では語られなかった真相を語る」とか「すべての批判に元少年Aが答える」みたいなコンセプトで続編を出すのだ。あるいは、『絶歌』を猛烈に批判している者や、心理学者、ジャーナリストなんかに寄稿してもらい、「絶歌とは何だったのか」みたいな解説本をつくる。巻末に「元少年A」による発売後の心境を綴った手記を掲載すれば初版20万部はかたい。太田出版では過去に『完全自殺マニュアル』が物議を醸した後、識者の見解を集めて『ぼくたちの「完全自殺マニュアル」』という解説本を出版して見事に“スピンオフ”を成功させた実績もある。

『絶歌』の説明(出典:太田出版)

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