30代半ばで現在の不動産会社に転職し、専務にまで出世されたAさんは「並んでいる人がいたら席はすぐに譲る」という気配りを当たり前のようにされていたのです。少し脱線しますが、小さなころ学校の先生や親からこのように教わったことがある人も多いでしょう。「妊婦さんや体の不自由な人、しんどそうな人、おじいちゃん、おばあちゃんがいたら席を譲ってあげなさい」と。専務のAさんは席を待つ男性のために早く店を後にする……、これは道徳教育の先にある「誠実さ」ではないでしょうか。
後にこのお話を専務にしたところ、「ん? そんなことあったかな」と店でのちょっとした気配りはあまりにも日常過ぎて覚えていらっしゃらないようでした。私が、出世する人としない人はどのような違いがあるのですかと聞いたところ、Aさんはこのように話されていました。
「そんな大きなことは言えないけれど、僕の持論として、会社のトップやその近い存在になる人間は、道徳心が欠如していないことが大前提だと思う。子どものころに父親や母親、学校の先生にたたき込まれた“当たり前のこと”をやり続けられる人間はなかなかいない」
当たり前のこととは、どういうことなのか。さらに話を聞いてみました。
「視界に入ったゴミを拾うとかかな。小さなゴミが落ちていてもそれをわざわざ屈んで手を伸ばして自分で拾うことが少なくなる。なぜなら、立場が上がれば上がるほど“そんなことはわざわざあなたがしなくても”と言われて、いつの間にか誰か他の人がやってくれるだろうと意識が働くようになるからね。
周りの取り巻きや地位はあっという間に失う可能性はあるよ。でも、それを失わない人というのはやっぱり誠実だし、“能ある鷹は爪を隠す”じゃないけれど、誰に対しても謙虚だし、何より当たり前の誠実さが根本にあるのでは」
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