でっぷりとしたタイコ腹を突き出した憂鬱(ゆううつ)な表情の男女が、ホッソリした途端にピッカピッカの笑顔で、こんがり日焼けして、歯まで白くなる。もはや伝統芸ともいえるベタなビフォーアフター広告だが、自宅の姿見の前でため息まじりにお腹の肉をつかんだ経験のある者ならば見ずにはいられない。
そんな扇情的なビジュアルにダメ押しをするのが「結果にコミットする」というスローガンだ。
「儲美頭信健」には「コンプレックスを刺激」という特徴以外にも共通点がある。儲(もう)かる、美しくなる、頭が良くなる、心が救われる、健康になる……もうお分かりだろう、通常の商いでは口にするのも憚(はばか)れるような明確な結果を声高にうたう。「結果にコミット」である。つまり、ライザップの成功というのは、「コンプレックスビジネス」のツボをしっかりと抑えているからとも言えるのだ。
ただ、これは諸刃の剣でもある。結果を明確にうたうということは、それだけ叩かれるリスクも高まるからだ。
しかし、ライザップがすごいところは、「2カ月で、このカラダ」というキャッチコピーによってこのリスクもうまく回避をしていることだ。この言葉は裏を返せば「このカラダ」を保証するのは「2カ月」のみで、3カ月、4カ月後にどんなカラダになるのかまでは面倒みませんよと宣言しているに等しい。つまり、この挑発的なコピーには事後責任から距離を置くという“守り”の側面もあるのだ。
実際に昨年、ライザップのビフォーアフター広告に出演してスリムになったグラドルが撮影会に現れたところかなりぷよっとしていたことがネットで話題になったが、この「リバウンド」でライザップを批判することはできない。
映画『スターウォーズ』でヨーダが、ルーク・スカイウォーカーに厳しい修行を施した後に「フォースはお前と共にいるのだ、いかなるときも」みたいなことを言って自信をつけさせたが、これと同様にライザップも「2カ月で肉体と習慣を変えましたが、それを持続できるかどうかはあなた次第」というロジックが成り立つからだ。
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