レノボとNECから学ぶ“賢い”事業統合の進め方トップインタビュー(2/3 ページ)

» 2015年06月12日 08時00分 公開
[岡崎勝己ITmedia]

統合のミーティングに各国から200人以上が参加

 留目氏は2011年にレノボ・ジャパンとNEC PCの事業統合の責任者に就任。以来、約1年がかりで統合を完了に導いた。そこでの取り組みは、「偏見のない目で観察し合い、互いの強みを理解すること」、「統合すべき組織と残すべき組織を切り分けること」、「統合に向けたプロセスを明確化すること」という3つのフェーズから成るという。

 だが、その過程では苦労も強いられたという。中でも手を焼いたのが、統合に向けたグローバルでの意見調整である。レノボ・グループは「地域」と「機能」によるマトリクス型の組織形態を採用。一方で、NEC PCは研究開発から調達、製造、マーケティング、サービスサポートまで一貫した機能を備えている。必然的に多様な社員が統合にかかわることとなり、電話会議の参加者は多いときで200人を超えた。

 「寄せられる意見はさまざま。日本の業績を、現状の評価指標で管理できるのかという声もあれば、ある部署の完全統合の時期を問う声もある。これらの議論の過程では、グローバルとローカルのバランスをとる上で参考にすべき意見も数多く寄せられた。日本人だけの作業では、それらに気付くことは到底困難。これもレノボの多様性の恩恵だ」(留目氏)

 国内ではレノボとNECが法人格として個別に存在しているが、兼務出向などの社内制度の利用を通じ、経営会議にはレノボとNEC PCの双方の担当者が参加するなど、事業統合により両社の組織的な結合度が強化された。経営陣には適材適所で人材を採用し、レノボとNECの出身者が半数ずつを占める。その成果は、コンシューマー向けPCにおけるレノボの国内シェアが出荷台数ベースで今年3月に一時は40%を突破するといった数字に表れている。「NEC PCの良さを残しつつ、レノボ・グループとした新たな成長力を付加することができた」と留目氏は胸を張る。

 NEC PCの統合プロジェクトはレノボ内でも高く評価され、留目氏は統合が完了した2012年からレノボ本社の戦略部門に異動。そこで与えられたミッションは、NECの統合プロジェクトで蓄積したノウハウのグループへの移植である。

 「統合の具体的なステップやチーム構成、スケジュール、検討項目などを本社に残してきた。現在、レノボではモトローラ・モビリティやIBMのx86サーバ事業の統合作業が行われているが、それらの進め方はいずれもNEC PCの事業統合が手本となっているのだ」(留目氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.