日本に逆輸入! KDDIの“まるごとオフィス”とは新連載・東南アジア発、気になるニッポン企業(1/4 ページ)

» 2015年06月11日 08時00分 公開
[野本響子ITmedia]

東南アジア発、気になるニッポン企業:

 いま、東南アジアが元気だ。かつては人件費の安さを背景に進出する製造業が中心だったが、現在では旺盛な個人消費にも注目が集まる。急成長する東南アジアを目指し、進出する日本企業、現地で起業する日本人の数も増え続けているのだ。本連載では、マレーシア在住の著者が、マレーシアを中心にして、東南アジアでローカル向けのユニークな事業を展開している日本企業、日系企業に、その経営戦略と展開計画を聞く。果たして、彼らの戦略は将来の日本にどのような影響を与えるのか。


野本響子氏のプロフィール:

 東京都立青山高校、早稲田大学法学部卒業。安田火災海上保険(現損保ジャパン)を経てアスキー入社。「MacPower」(アスキー)「ASAHIパソコン」「アサヒカメラ」(朝日新聞出版)の編集者を経て現在フリー。『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」する』(松井博著/アスキー新書)編集。著書に『いいね! フェイスブック』(朝日新聞出版)『マレーシアの学校の○と×アジア子連れ教育移住の第一歩』(Kindle)ほか。現在KL郊外に長期滞在中。マレーシアの教育事情などを書いたブログを更新中。


 2015年のGDP成長見通しは4.5〜5.5%と堅調な東南アジアの中堅国家マレーシア。近年マレーシアに進出する日系企業は増加の一途で、一見すると日本国内での内需に特化しているような電話会社ですら、積極的にマレーシアに進出している。では、国際電話やauなどで知られるKDDIが海外で何をやっているのか。

 KDDIのマレーシアでの歴史は長い。1992年、前身のKDD時代にマレーシア支社を設立し、1999年には現地法人化、その後KDDIに社名変更し、いまに至る。

 当時は主に現地に進出する日本企業へのサポートをしていた。1990年代、日本から出て行く企業や工場が増え、需要の増加が背景にあったという。最近では日本から進出する大型工場は激減。現在ではローカルのお客を含めた戦略が必要になってきた。

KDDIが海外で展開

 マレーシアでの同社の主力商品は「システム・インテグレーション」。簡単に言えば、オフィスや工場のハード・ソフト面をサポートを含めて、“まるごと”作ることだ。もともとは、日本から進出する企業のために始まったこのサービスを、現在同社はマレーシアの現地企業に対しても展開中だ。「意外に思われるかもしれませんが、オフィスの机やイスの選定までIT企業である私たちに任せてもらっています」と語るのはKDDI マレーシアでセールスマネジャーを務める吉川萬太郎さん。

 業務の内容はシステムをはじめとするハードウェアからソフトウェアまですべての調達、選択、サポートだ。

 「私たちの仕事を簡単に言えば、オフィスの何でも屋さんです。もともとは、日本から現地法人を設立しに来る日本人のためのサービスでした。日本から現地にいきなり来たスタッフは、言葉は通じず、知り合いも少ない中で、イチからすべてをまかなわないといけません。そこで、オフィスに関わる一切合切を私たちに任せてもらうことで、新規事業に専念してもらおうと、この事業が始まったのです。現在、この事業を現地のマレーシア人の企業にも使ってもらおうとしています」

KDDI マレーシアでセールスマネジャーを務める吉川萬太郎さん
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