GEが「GEキャピタル」を売却、その狙いは撤退(3/4 ページ)

» 2015年06月10日 10時30分 公開
[日沖博道INSIGHT NOW!]
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今が金融事業の売り時

 ヒントは、イメルト氏は過去にも似たような行動を起こしていることです。2007年にプラスチックス部門を、そして先に触れたように2011年から2013年に掛けてはメディア部門を、昨年には創業事業である家電部門を、それぞれ切り離しています。前任者のジャック・ウェルチ氏は「中性子爆弾・ジャック」の呼び名があったほど苛烈なリストラ実行が目立っていましたが、イメルト氏にはそうしたイメージはありません。しかし実態は違います。彼もまたウェルチ氏に劣らない「リストラを躊躇(ちゅうちょ)しない経営者」なのです。

 ただしウェルチ氏のように単純に「業界1位または2位」以外は手放す(といいながらもNBCや家電部門・金融部門を残していましたが)という「ポートフォリオ経営」に徹しているわけではないようです。むしろ少しずつグループの事業ドメインをはっきりさせて理想の形に近づけるべく動いてきたというのが事実のようです。その過程ではウェルチ氏同様の「業界1位または2位」などの原則も掲示していましたが、重きを置いていたのは全体像であり、そのための投資の原資をまかなう一助にすべく、全体像に必要のない部門を売却してきたという、実に長期観点での戦略経営をしてきたのがイメルト氏です。

 そのイメルト氏が「今がその時だ」と考えた理由はおそらく3点あります。その第一は、「今が金融事業の売り時だ」という判断でしょう。

 リーマンショック後、GEキャピタルは資産の切り売りを着々と進めてきたため、そのバランスシートは縮小と同時に相当な改善を既に果たしたと見られます。そうした売り物に「磨きを掛けた」状態に持ってきたうえで、今は米系・中国系を中心に世界の金融業界が「いい出物がないか」と探し回っている、一種のバブル状態です。これこそGEにとっては長年待ち焦がれた売り時の到来です。実際、GEキャピタルの大幅な事業縮小策の発表時には同時に、米投資会社のブラックストーンや米大手銀行のウェルズ・ファーゴに不動産関連資産を265億ドルで売却することが公表されました。

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