お菓子の新商品が、なかなかヒットしない理由水曜インタビュー劇場(お菓子公演)(2/6 ページ)

» 2015年06月10日 08時05分 公開
[土肥義則ITmedia]

60年代前半のお菓子に共通すること

1913年に発売されたミルクキャラメル

土肥: お菓子勉強家の松林さんにおうかがいします。スーパーやコンビニのお菓子コーナーに行けば、たくさんの商品が並んでいるのに、よーく見れば定番商品ばかりなんですよね。「この商品、見たことがない!」といったモノを見つけるのが、本当に難しい。なぜこうした現象が起きているのでしょうか?

松林: その答えを言う前に、お菓子の歴史をご紹介させてください。下の年表を見ていただけますか? これは1960年代前半までの主なお菓子が並んでいます。ここでドイさんに質問です。商品名がズラリと並んでいますが、ある共通点があるんですよ。それは何だと思いますか? 一部例外はありますが。

60年代前半までに発売された主なお菓子

発売年 メーカー名 商品名
1913 森永製菓 ミルクキャラメル
1918 森永製菓 ミルクチョコレート
1922 江崎グリコ グリコ
1923 森永製菓 マリービスケット
1926 明治製菓 ミルクチョコレート
1926 セイカ食品 ボンタンアメ
1927 明治製菓 サイコロキャラメル
1930 森永製菓 マンナ
1933 江崎グリコ ビスコ
1945 近畿食品 すこんぶ
1948 佐藤製菓 松露
1949 パイン パイン飴
1949 島田製菓 ラムネ菓子
1950 春日井製菓 チャイナマーブル
1952 オリオン ココアシガレット
1952 不二家 ミルキー
1954 不二家 ポップキャンディー
1955 江崎グリコ アーモンドグリコ
1955 カンロ カンロ飴
1957 ロッテ グリーンガム
1958 江崎グリコ アーモンドチョコレート
1962 不二家 LOOKア・ラ・モード
1962 松尾製菓 チロルチョコレート
1962 明治製菓 アーモンドチョコレート

土肥: うーん、何でしょう? 広報のYさんも一緒に考えてくださいよー。

広報Y: うーん、分かりません。

松林: 答えは「甘い」なんですよね。当時のお菓子といえば「甘いモノ」だったんですよ。しかし、60年代前半から甘いモノだけでなく、甘くないモノが増えてきました。例えば1962年に「ポテトチップス のり塩」(湖池屋)、1968年に「カール」(明治)などが登場しました。甘いモノだけではなく、スナック菓子が支持されたことで、お菓子にも多様性が広がってきました。

 あと、60年代前半までは、いわゆる“単品”モノが多かったんですよね。チョコ、飴、キャラメル、ビスケットといった感じで。ただ、60年代半ばになると、組み合わせ商品が増えてきました。例えば、1966年に発売された「ポッキーチョコレート」(江崎グリコ)。既存商品「プリッツ」にチョコレートをコーティングするなど、工夫された商品が目立ってきました。さらに「源氏パイ」(三立製菓)、「おにぎりせんべい」(マスヤ)など、素材にも変化が出てきました。

 あまり知られていないと思うのですが、お菓子って社会の動きに大きな影響を受けているんですよ。

土肥: どういう意味でしょうか?

60年代前半〜70年代前半に発売された主なお菓子

発売年 メーカー名 商品名
1962 湖池屋 ポテトチップス のり塩
1963 日清 シスコーン
1963 江崎グリコ プリッツ
1965 三立製菓 源氏パイ
1965 亀田製菓 柿の種
1965 森永製菓 チョコボール
1966 江崎グリコ ポッキーチョコレート
1969 マスヤ おにぎりせんべい
1969 明治製菓 アポロ
1970 サクマ製菓 いちごみるく
1970 名糖産業 アルファベットチョコレート
1972 東ハト オールレーズン
1972 カルビー サッポロポテト
1973 不二家(ネスレ) キットカット

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