電気シェーバー市場で、日立だけが「ロータリー」にこだわり続ける理由スピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2015年06月02日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

実は画期的な技術革新

5月21日に発売された最新機種の「ロータリージーソード」

 思い当たる男性も多いかもしれないが、実は電気シェーバーを利用している者の多くはT字カミソリも「併用」している。首などに剃り残しがあった時など“カミソリの逆剃り”で仕上げをする人は少なくない。また、なによりも“剃った感”があるので、ここぞという時に使用するという人も多いのだ。事実、日立が調査したところ、ヒゲを剃る男性の約6割が「併用」、もしくはT字カミソリのみを使用しているという結果が出たという。

 これは電気シェーバー開発者にとって、ある意味で屈辱的ではないだろうか。これだけ世に多機能で高性能な製品が出ているにもかかわらず、「爽快感」や「仕上げ」ということではいまだにT字カミソリに軍配があがっているからだ。

 だが、岩倉氏ら日立開発陣のリアクションはやや異なる。これを新機種のコンセプトにしたのだ。

 「ロータリーを使用しているお客さまから、T字カミソリのような切れ味で肌がツルツルになるという評価もいだいていましたので、T字カミソリのようなロータリーはつくれないかと考えたのです」

 こうしてできあがったのが、5月21日に発売された最新機種の「ロータリージーソード」だ。ビジュアルからジレットなんかのT字カミソリをそのまま大きくしたようなデザインが印象的だが、実は意識しているのは外観だけではない。

 洗顔料を外刃に塗ると、中のドラムレザー刃の回転でキメ細かい泡がすぐにできるので、シェービングクリームを用いたような“泡剃り”ができる。さらに、持ち方を逆剃りのように変えると、内刃も逆回転をしてT字カミソリのようなアゴ下などの“逆剃り”が可能なのだ。

 「これまでのロータリー式の外刃は一方向からの圧力しか吸収できないので、逆剃りはオススメできなかったのですが、新機種では双方向からの圧力を吸収できるバネを入れたことで、順剃りでも逆剃りでも均等に圧力がかかるようになりました。細かい話なのですが、実は画期的な技術革新だと思っています」

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