電気シェーバー市場で、日立だけが「ロータリー」にこだわり続ける理由スピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2015年06月02日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

ロータリーに対する“強いこだわり”

 そんな疑問を、日立マクセル株式会社ライフソリューション事業本部設計部電気カミソリ設計課の岩倉幸太郎課長にぶつけると、思いのほかあっさりと否定された。

 「ロータリー愛? うーん……私たちは別にロータリーという方式にこだわっているわけではありません。実際にウチでは往復式シェーバーも出していますから……」

電気カミソリ設計課の岩倉幸太郎課長

 まあそんなもんだよなと拍子抜けをしたが、あとに続く言葉からロータリーに対する“強いこだわり”が感じられた。

 「ただ、電気シェーバーはやはり切れ味がないといけません。どうすればより深剃りができるのかということにこだわり続けていくと、どうしてもロータリーにたどりつく。往復式や回転式にもそれぞれメリットはありますが、一定のスピードでヒゲを外刃と内刃で挟み込むという点ではやはりロータリーが最も効率がいいんです」

 電気シェーバーは外刃を肌に押し付けて下から上へ押し上げることでヒゲを立たせて、中の内刃でカットしていくのだが、往復式の場合は内刃が左右からやってくるので、せっかく立たせたヒゲを寝かせてしまう。また、どうしても左端、右端に「停止点」が生じるので、カッティングスピードにムラが生じてしまうのだ。では、回転式はどうかというと扇風機の羽根をイメージしてもらうといいが、内刃の外側と中心部ではどうしてもムラが生まれる。また構造的にも、外刃が厚くならざるをえないのだ。

 外刃が下から押し上げたヒゲを、上から内刃が挟み込むような形でカットできればより深剃りが実現できるのではないか――。そんな発想のもとで開発されたのが、1990年5月に発売された世界初のロータリーシェーバー「RMーX1」である。

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