狙いは何? トヨタとマツダ、“格差婚”の理由池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2015年06月01日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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マツダの狙いはどこにあるのか?

 ここからはもはや筆者の憶測に過ぎないが、この提携でマツダにメリットがあるとすればトヨタからの生産受託なのではないかと思っている。先ごろデビューしたロードスターは、まもなくフィアット版がデビューすると言われている。しかもこれは図面を提供するのではなく、マツダの宇品工場で生産受託をするらしい。そんなことができるのはマツダの生産改革で、同時に違うクルマを平行してラインに流すことができるようになったからだ。

 マツダは世界的にユニークなロードスターのシャシーコンポーネントを使って、他社の製品を作ろうとしている。それは量産効果が限られるロードスターのようなクルマを今後もサステイナブルにしておくためには重要なことだ。いわばマツダは、ロードスターを守るために他社にシャシーを供給してコスト回収のハードルを下げようとしているのである。

 ここからの発展という見方をすれば、マツダは生産受託によって、活路の一つを開こうとしている可能性が見えてくる。せっかく生産改革をやったのだから、あとはラインに流すクルマを用意するだけだ。しかし、マツダは1990年代の多チャネル多車種展開の失敗で倒産しかかった過去が身にしみているので、無防備に自社の車種を増やす戦術をとるとは思えない。そこでトヨタのクルマの一部をマツダの工場で生産すれば工場稼働率の安定が見込めるのだ。

 トヨタの方はマツダの部品やOEM車を販売できる上に、自社のクルマの生産もマツダに投げられてスマイルカーブ戦略がまた一歩進むことになる。

ロードスターを生産する、マツダの宇品工場

 さて、この予測が正しいかどうかはなんとも言えない。ただこんな予測をするくらい、今回の提携はマツダにとって即効性があって具体性の高いメリットが見えてこない。しばらくは提携の行方をしっかりと観察していきたいと思っている。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

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