狙いは何? トヨタとマツダ、“格差婚”の理由池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2015年06月01日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 5月13日の発表以来、トヨタとマツダの技術提携が話題になっている(参照リンク)。話題になるのはあまりにも規模が違うからだ。言ってみれば格差婚のようなもの。結婚ならば「当人同士が良ければそれでいいじゃないか」と言えるが、企業の場合はそもそもが利益を目指しているわけだから相互にメリットがなければ成立しない。

5月13日、トヨタとマツダは業務提携に調印した。写真は調印式に臨むトヨタの豊田章男社長(左)とマツダの小飼雅道社長(右)

公式発表は環境技術と先進安全技術での提携

 この提携のメリットはいったい何なのか? 両社の発表から抜き出してみる。

 “『クルマが持つ魅力をさらに高めていく』ことを念頭に、両社の経営資源の活用や、商品・技術の補完など、相互にシナジー効果を発揮しうる、継続性のある協力関係の構築に向けた覚書に調印したと発表しました。今後、両社で組織する検討委員会を立ち上げ、環境技術、先進安全技術といった分野をはじめとする、互いの強みを生かせる具体的な業務提携の内容の合意を目指していきます”

 ほとんど建前に終始している内容で、意味があるのは「環境と先進安全技術分野」が中心だということだけだ。後述するがトヨタ側のメリットは割と見えやすい。問題はマツダ側のメリットだ。この提携について書かれたあちこちの記事を見ても、やはり「脆弱なマツダの財務体質の保証」という疑念を伝えるものが見られる。「理由がわからない以上金がらみだろう」という話だ。現在マツダの決算は良好だが、自動車メーカーを資本規模で一軍と二軍に分けたら、マツダは自他共に認める二軍である。

 それを脆弱とまで言うのはちょっと言葉が過ぎる気がするが、世界各国でハードルが上がる安全基準や環境基準対応など、技術開発のコストは青天井に増えつつある。それらの開発を遅滞なく進めていくだけの盤石な財務体質がマツダにあるかと言えば足りないのは事実だろう。それなりの根拠はある。

 しかし、金は出すが口は出さないというケースはまずない。トヨタの財務的庇護が支配の始まりになるのは目に見えている。当然何歩かすっ飛ばして「マツダはトヨタに吸収されるのではないか」という憶測が飛ぶ。そんなことはトヨタもマツダも分かっているから「資本提携は考えていない」と両トップがあらかじめ否定したわけだ。

 さて上述の通り、この技術提携は公式な発表によれば「環境と先進安全技術分野」分野での提携ということである。特に環境技術に関して、トヨタからみればマツダの持つ小排気量のディーゼルエンジンや、高圧縮比の小排気量ガソリンエンジンなど、いわゆるコンベンショナル(従来的)なエコエンジンは魅力的だ。

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