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» 2015年05月29日 11時45分 UPDATE

「成果は大きく返す」 リクルートグループで“異色”の研究開発機関とは?

最先端IT技術の研究開発に従事するリクルートテクノロジーズの「ATL」。ユニークなのは、研究テーマは必ずしも事業ニーズに沿ったものでなくてもいいというのだ。

[伏見学,ITmedia]
「パン田一郎」(出典:公式サイト) 「パン田一郎」(出典:公式サイト)

 「何か良いアルバイトない?」。ユーザーがLINE上でパンダのキャラクターに尋ねると、すぐに最適なお仕事情報を教えてくれる。どうでもいい雑談にも付き合ってくれる。これはアルバイト情報サイト「フロム・エー ナビ」などを運営するリクルートジョブズが提供しているLINE公式アカウント「パン田一郎」だ。

 実はこのサービスの裏側の仕組みは非常に高度。ユーザーの会話文をシステムが自然言語解析処理して、フロム・エー ナビの案件データベース(DB)および一般会話に関するDBから最適な情報を抽出し、回答文を自動生成しているのである。

 この自然言語処理技術を開発しているのが、リクルートグループの中で先進的なIT技術にかかわる研究開発をつかさどる「アドバンストテクノロジーラボ(Advanced Technology Lab:ATL)」だ。

ウェアラブルなど4テーマに注力

 ATLは、リクルートグループのIT専門事業会社であるリクルートテクノロジーズの一組織である。研究開発それ自体は同社のビッグデータ部門やセキュリティ部門などでも取り組んでいるが、そこでの研究はあくまで事業のニーズに沿った内容であり、基本的には収益貢献につながらなくてはならない。一方で、ATLは事業ニーズとは切り離し、世の中の潮流に合わせた最新技術を研究開発テーマにしている点が大きな違いである。

 「ソリューション部門の研究開発であれば、事業ミッションを達成するものでなくてはならないが、ATLは必ずしもビジネスにつながるものでなくてもいい。ただし、事業現場レベルで思いつくようなテーマでは当然駄目だ」と、ATLを統括するリクルートテクノロジーズの米谷修執行役員兼CTO(最高技術責任者)は力を込める。

 現在掲げるテーマは4つ。ウェアラブル端末に代表される「次世代デバイス」、大量データの「リアルタイム処理」、自然言語解析処理などを活用した「次世代検索エンジン」、そして「次世代開発基盤」である。特にウェアラブル端末の研究開発には注力していて、「スマートアクセサリー」や「スマートグラス」の利活用実験などを行っている(関連記事)

世の中の先回りをする

 リクルートテクノロジーズがATLを立ち上げた理由は、「サービス開発の高速化」だ。次々と新しい技術が登場する中で、それが世の中でトレンドになったり、標準化したりしてから、その技術を取り込んでサービス開発していては遅過ぎるという危機感の表れからだ。実際、過去にリクルートグループはWebサイトのモバイル対応への着手が遅れてしまった経験があったという。

リクルートテクノロジーズの米谷修執行役員兼CTO リクルートテクノロジーズの米谷修執行役員兼CTO

 「リクルートは大組織として数多くのサービスを抱えている。新しい技術が出てきたからといって、ちょっと試してすぐにサービスに取り込みリリースするということではすまされない。ただし技術が一般的に普及してからでは当然遅い。そこで先回りして次世代の技術に備えておくことが重要だった」(米谷氏)

 将来どうなるか分からない技術に対してアプローチしていくわけなので、ATLの取り組みに対する評価の仕方は難しい。これまでの実績を振り返ると、20個ほどの研究開発テーマのうち1個が実を結ぶような確率だという。この数字が概ね妥当なアベレージのようだ。

 ATLの方針は、投資対効果を厳しく管理しない代わりに、予算や人員の枠をしっかり決める。現在の人員は10人ほどだ。「景気が良いからといって予算や人員を急に増やすことはないが、景気が悪いからとリソースをゼロにすることもしない。研究開発は何があっても止めずに、一定量をずっとやり続けておくことが大切なのだ」と米谷氏は説明する。

 こうした研究開発に対する姿勢はリクルートホールディングスの峰岸真澄社長をはじめ、経営層からも理解を得られているという。ただし、必ずコンスタントに研究成果を上げ、リクルートのサービスに実装できるものを出さなければならない。「ATL以外の部署は毎日納期や品質向上に追われながらやっている。我々は毎日成果を返すことはできないが、数年に1度大きく返す。そうした信念でやっている」と米谷氏は強調した。

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