世界で戦うために“やってはいけない”ことは? もっと「個」で行動しよう日米のビジネス事情の違いを知る(後編)(3/5 ページ)

» 2015年05月29日 08時00分 公開
[公文紫都ITmedia]

関: 団体ツアーの話もそうですけれど、日本人の場合、「そこの場で何を得たいのか」「何を得るために自分/自社はどんな行動を起こすべきなのか」をハッキリさせないまま、動き出すことがあります。ですから海外出張時に、日本人得意の“表敬訪問”をしたがるんです。

 昔、当社の本社がシリコンバレーにあった時、「来週シリコンバレーに行くので、オフィス訪問させてください」という依頼がよくありました。私が日本にいてシリコンバレーにいなくても、それでもオフィス訪問したいと。そこで、「アポを取る目的は何ですか? 」と聞くと、「あ、表敬訪問です」という返事が来ることもありました。日本人は「訪問」そのものを目的にしていることが多いですが、「表敬訪問に……」と言われるのは受ける側からすると、インセンティブがないので困るのです。

 米国人は、不要だと思ったらメールに返事をせず遠回しに断りますからね。本気でアポを取りに行く場合には断られないよう、代わりに私が考えていました。「どうして出張に行くんですか?」と質問して、その答えをヒントにするなど。そこから、「たぶん話題としてはこういうことになるだろう」と考えて、米国側の担当者に「これから訪問する人はこういうバックグラウンドがあって、こういう仕事をしているから、こういうことを聞くとビジネスにつながるかもしれない。だから会ってくれ」とつなげていました。

 ここまですれば大抵は会ってくれます。相手側もビジネスの意識を持っているので会えば親しく話してくれますが、訪問者側が本当に目的を持っていかないと、せっかくの打ち合わせがうまくいかないこともあります。米国人の多くは、事前に目的を定めてから打ち合わせや会食に臨むので、「この日は誰が来る」から始まって、「その人と何を話すか」という具体的な内容まで予め固めています。もちろん日本人の中にもそういう事前準備をする人はいますが、あまり多くない印象です。

 米国人のように「目的意識」を明確にしておかないと、せっかくの貴重な時間が、相手にとってはただの迷惑な時間で終わってしまうこともありますから、真剣に米国とのビジネスを進めたいのであれば、そのへんは気をつけたほうがよいと思います。

石渡: 確かに、日本人が相手だと目的意識がハッキリしていない打ち合わせって結構ありますが、私は苦手ですね。とりとめのない話をしても仕方がないので。せめてこういうものを作るなり、売るなりしようよ! という話がしたいです。

関: まあ実際そうじゃないことが多いんですよね。せっかくオフィス訪問の時間をもらったのに、記念写真撮っておしまいとか。

石渡: 日本人によくあるパターンですね(笑)。

関: 当社のシリコンバレーオフィスを来訪した日本人の中には、「グーグルにも行きたいんですけれど、行けますか?」と言ってきた人もいたそうです。「大丈夫です、玄関に行って写真撮って帰るだけですから」と。本当にオフィスの前に行って写真撮るだけならよいんですけれど、実際には「中に入りたい」「人に会いたい」という話になりますよね。

 グーグルを観光地として捉え、そこに行くこと自体は否定しません。でも、こういう明確な目的がないアポなし訪問は相手の立場からすると、わざわざ会う理由がないのに時間を割く必要があるんだろうか? と思うものです。いきなり言葉が通じない人が来ても困るだけですからね。

 逆に考えてみたら分かると思うのですが、自分が日本のオフィスにいて、日本語があまり得意じゃない人から、「東京のオフィスがカッコイイから、1時間訪問させてください」と言われても受けますか? という話です。実際、受ける人は少ないと思います。でも逆の立場のときには、そこの意識が希薄化してしまう。

 日本人はオフィス訪問にしても、カンファレンス参加や工場見学にしても、「海外に何をしに行くのか」、しっかり目的を定めてから行動に移したほうがよいですね。もしツアーに参加して取引先を作ることを目的にしているなら、ツアー中に自分の足で動くなど。本気で海外でのビジネスを成功させたいんだったら、人任せは早く卒業したほうがよいと思います。

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