汽笛一声「愛の出発式」、SLブライダルトレインの魅力杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)

» 2015年05月22日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

鉄道ファンでなくても楽しめる?

 午前11時ごろ、新金谷駅の向かい側の観光施設「プラザロコ」で受付開始。東京方面からの出席者は東京駅9時3分発の「ひかり465号」、大阪方面からの出席者は新大阪駅8時40分発「ひかり460号」で間に合う時刻だ。新婦の出身地、浜松からの出席者は貸切バスで到着した。貸切バス、乗車券の手配も日本旅行が別料金でサポートする。交通費付きのプランもある。

 11時30分ごろからホームで結婚式の準備が始まる。この日は一般客向けのSL列車「川根路1号」が11時52分に発車する。海外からの団体客も多いため、舞台の設置は最後だ。「川根路1号」の発車の汽笛を合図に、出席者がホームに集まる。鉄道ファンではなくても蒸気機関車は珍しいし、興味深い。先に発車するSL列車を見て、ブライダルトレインへの期待感が高まっていく。

結婚式の出席者たちが「式場」に待機。先行列車の出発に期待を募らせる 結婚式の出席者たちが「式場」に待機。先行列車の出発に期待を募らせる
新郎に続き新婦入場。ホームの屋根が教会のように見える 新郎に続き新婦入場。ホームの屋根が教会のように見える
駅長が証人代表となり、乗車券付きの結婚証明書を授与 駅長が証人代表となり、乗車券付きの結婚証明書を授与

 12時ごろに人前結婚式が始まった。立会人代表は駅長。結婚の宣誓を行い、承諾の動議を実施。もちろん全員異議なし。結婚証明書にサインし、指輪を交換。誓いのキスが滞りなく進行する。その場に一区切りを付けるかのように車庫から汽笛が鳴り、ブライダルトレインも「参列」。新郎がデザインしたヘッドマークが新郎の手で取り付けられ、新婦もステップに立って「出発式」だ。新郎の挨拶の後、乗車開始となる。

新郎がデザインしたヘッドマークを取り付けて出発進行のポーズ。C10形は除煙板がないため、正面が広々としている 新郎がデザインしたヘッドマークを取り付けて出発進行のポーズ。C10形は除煙板がないため、正面が広々としている

 蒸気機関車はC10形8号機。新郎新婦の希望で選ばれた。大井川鐵道は4台の蒸気機関車を動態保存しており、ブライダルトレインは当日に稼働予定の機関車から選択できる。出席者に川崎車両や三菱重工の関係者がいた場合に配慮できる……そこまで気にしないか(笑)。ちなみに、C11形190号機はお召し列車をけん引した経歴を持つ。C11形227号機はもうすぐ「きかんしゃトーマス」に改装される(関連記事)。C56形44号機は炭水車付きで、夫唱婦随のイメージがあると言えそうだ。こちらも夏に「きかんしゃジェームズ」に改装される。大人の事情で、トーマス、ジェームズになるとブライダルトレインでは選択しにくいという。

通常のSL列車の発車間際から舞台の準備が始まる。奧のSL「C11 227」は、もうすぐ「きかんしゃトーマス」に変身する予定 通常のSL列車の発車間際から舞台の準備が始まる。奧のSL「C11 227」は、もうすぐ「きかんしゃトーマス」に変身する予定

 客車は4両編成だ。1号車が旧型客車のオハフ33。スタッフの控え室や演出用機材置き場として使われる。2号車と3号車はお座敷車両として、会席弁当がセットアップ済み。4号車は展望車で、イベントスペースとなる。個室が1つあって新郎新婦の控え室として使われる。いわば新郎新婦専用車で、贅沢な気分だ。

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