汽笛一声「愛の出発式」、SLブライダルトレインの魅力杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)

» 2015年05月22日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

便利な「SLブライダルトレイン」

 鉄道ファンが婚約したら「大好きな列車で結婚式ができないか」というアイデアが浮かぶだろう。しかし実際にはハードルが高い。鉄道は公共交通機関であり、私事で列車や駅を占有するイベントは、まず許可されない。最も簡単な方法は、団体貸切列車を運行して車内イベントとして実施する方法がある。この場合も行程について鉄道会社との綿密な打ち合わせが必要だ。

 日本旅行と大井川鐵道の「SLブライダルトレイン」は、実施までの面倒な手続きはいらない。希望者からの電話1本で、日本旅行と大井川鐵道のスタッフが結集しプロジェクトが始まる。車両、運行ダイヤ、飲食の手配も手慣れたもの。独自の演出の希望にも対応できる。日程が合えば、実際の結婚式を下見できる。これらはブライダルビジネスでは当たり前のことだ。それが鉄道でできるようになった。

 ただし、トレインブライダルのハードルはシステムだけではない。趣味的な要素が強いだけに、出席者の心情という要素も大きい。まず婚約者が同意してくれるか。次に、両家の両親が納得してくれるか。トレインブライダルは親族旅行ではない。新郎新婦ゆかりの人々、上司や取引先などお世話になっている方々が、わざわざ大井川鐵道まで足を運んでくださるか。もてなしに失礼があってはお祝い気分も抜けてしまう。参列者全員が鉄道ファンだったら全く問題ないけれど、そんなことはまずない。

 SLブライダルトレインの満足度は実際に見るしかない。5月吉日、実際に運行されたブライダルトレインに同行させていただいた。

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