汽笛一声「愛の出発式」、SLブライダルトレインの魅力杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)

» 2015年05月22日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


 静岡県を走る大井川鐵道のSL列車が結婚式場になる。普段のSL列車はボックスシートの旧型客車で運行されているけれど、同社は「お座敷車両」が2両、「展望車」が1両あり、これらを使う。実はこれらのイベント車両は旧国鉄の客車ではなく、西武鉄道の電車を改造している。もっとも、基になっている電車は60年前に製造され、改造から30年も経っているからレトロ感がある。SLによく似合う。

 このイベント車両は、主に団体貸切列車やイベント列車用だ。しかし、ほとんどの団体客は通常運転のSL列車で足りるし、イベントも「ビール列車」程度しかない。お座敷車、展望車とも活躍の機会が少なく、もっぱら新金谷駅構内の飾りであった。鉄道ファンなら乗ってみたい車両だけど、もったいない。

 そこに注目して、新たなビジネスを提案した人がいる。日本旅行 大阪法人営業支店の山中章雄さんだ。SL列車とイベント車両を使って、ブライダルトレインを企画した。しかも「受注型企画旅行」として商品化した。パンフレットを用意し、基本料金は「往復乗車70名様セットで200万円」「増減1名に付き6400円で調整」「20名から実施」と料金を明瞭化した。いわば「ブライダルトレインのパッケージ化」だ。

 この企画は2014年に始まったばかり。成約件数も3件と、ブライダルビジネスとしては小さい。しかし、鉄道の旅の新しいビジネスモデルとして期待できる。「鉄旅オブザイヤー2014」で審査委員特別賞を受賞した。

「SLブライダルトレイン」でのケーキカットの様子。ケーキの上にはSL型のチョコレートケーキが載っている 「SLブライダルトレイン」でのケーキカットの様子。ケーキの上にはSL型のチョコレートケーキが載っている
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