JR東日本がクルマの自動運転に参入する日が来る?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)

» 2015年05月15日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


 クルマの自動運転社会が実現すると、鉄道の存在意義が問われる。特に地方で。

 自動車に対して、列車の優位な機能は、大量輸送、高速、定時性だ。クルマが道路に集中すれば渋滞が起きる。自動運転であるかないかは関係ない。現在、通勤電車が運んでいる人々がすべて自家用車になったら、渋滞は増え、その対策に道路の拡幅が必要で、究極には都心に向かうほど道路だらけになる。オフィスを置く場所もなくなって、クルマに乗る目的がなくなってしまう。あり得ない。

 だから都市の鉄道路線は安泰だ。都市間を結ぶ特急列車もスピードで優位に立てる。しかし、地方のローカル線はどうか。輸送量が少なく、バスでも足りるような路線なら、自動運転のクルマのほうが便利ではないか。

 本誌の連載・池田直渡さんの「週刊モータージャーナル」でクルマの自動運転の話が続いている(関連記事)。これがとても興味深い。詳細は記事を読んでいただくとして、一般道を自律走行するシステムも実験段階に入っているという。メルセデスベンツは2013年、一般公道100キロメートルを自動運転で走破したそうだ。ボルボは本社があるスウェーデン・イェーテボリ市の一般公道で自動運転車両を走らせる実験を行う。2017年までに100台の運行が目標とのことだ。

ボルボの自動運転車システムソリューション(出典:同社プレスリリース) ボルボの自動運転車システムソリューション(出典:同社プレスリリース)

 イェーテボリ市の公式サイトによると人口は約54万人。Wikipediaによれば中央駅から首都ストックホルムまでは列車で3時間。北海に面する港湾都市で、空港もあり、路面電車が走る。日本の都市に例えるなら松山市くらいの規模だろうか。そこで100台の自家用自動運転車が走り出す。ボルボのプレスリリースによると、この実験は「政策立案者や運輸担当の行政機関、市、自動車メーカーが連携して実施する」という。

 日本のクルマも、車間距離を保つシステムや、直前に横切る人や物を察知すると緊急ブレーキをかけるシステム、道路の白線を検知してレーンを維持するシステムが実用化されている。車庫入れや縦列駐車もやってくれる。そこまでは私も知っていたけれど、出発地から目的地まで、ドアツードアの自動運転ができる時代がやってくるそうだ。

 サーキットや制限エリアではなく、一般道路で実現できるとは驚く。ボルボの取り組みが国を挙げて行われる背景は、もちろん世界の自動車市場を見据えているからだろう。自動運転技術において、いち早く実績を積めば、ボルボは世界のリーダーになるかもしれない。そして、日本のクルマの技術者たちは嘆くだろう。そんなことは日本ではなかなかできない。日本はクルマ側の自動運転技術に先んじたとしても、自動運転社会への取り組みは難しい。

 いや、そんなことはない。ボルボのプレスリリースでも、実験は“一定の”一般公道と書いてある。実験できる道路には条件があるようだ。それなら日本でも限定的に自動運転をサービスできる道路がある。BRT(バス・ラピッド・トランジット)専用道だ。現在はバス専用だけど、この区間を自動運転モードの自家用車も利用可能とする。通行はバス優先としても、バスが停留所に退避しているときは追い越し可能。自動運転はそのくらいのプログラムができるはずだ。

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