「チューハイ増税」に影響を与える“甲乙戦争”とはなにかスピン経済の歩き方(4/4 ページ)

» 2015年05月12日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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“甲乙戦争”を制したのは本格焼酎

 そんな“甲乙戦争”ともいうべき長い対立を制したのは乙類焼酎こと本格焼酎である。地道な酒づくりによって徐々に市民権を得たことで、焼酎ブームが起こり2003年に見事、出荷数で甲類焼酎を抜き去ったのだ。

 だが、その天下は長く続かなかった。上述のように2006年から成長に陰りが見えてきたのである。若者のアルコール離れ、高齢化や団塊世代のリタイアなどさまざまな要因があるが、本格焼酎としては許せない現象も起き始めたのだ。

 それは、低アルコール飲料が人気となり、チューハイをはじめとするRTD(Ready To Drink)と呼ばれる飲料が増えて、さらに大手メーカーが手軽に本格的なお酒を楽しむことができるRTS(Ready To Serve)という新カテゴリーへ続々と参入し始めたのだ。

 その代表が、石原さとみさんのCMで知られる「ふんわり鏡月」だ。女性を中心に支持され、2014年販売実績は前年比約2倍になる見込みで、発売2年目で大きな可能性を秘めた商品に成長をしている。それだけではない。本家の「鏡月」ブランドにも好影響を与えているのだ。

 このようにクセのないフレーバーがもてはやされ、甲類焼酎が注目される風潮というのは、飲みやすい炭酸割りが若者の間に普及した過去のチューハイブームを連想させる。つまり、本格焼酎にとってRTDやRTSの好調さというのは「悪夢」の再来なのだ。これに少しでもブレーキをかけてくれるのが「チューハイ増税」であることは言うまでもない。

 そんな本格焼酎にとっての“追い風”を検討中の自民党税制調査会は、野田毅衆議院議員が会長を務めている。

 野田氏といえば、「TBSニュースバード」にご出演された時(2014年5月16日放送)、趣味は何かと問われて、「お酒飲むくらいかな。もちろん球磨焼酎!」と即答したほど地元熊本と本格焼酎を愛していらっしゃることで知られている。

 マッサン効果でウイスキーが人気になった。今度は日本が誇る蒸留酒である本格焼酎の巻き返しがあるのかもしれない。

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