地下よりも空が最適? 都市型ロープウェーに注目だ杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)

» 2015年05月08日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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ルートは未定、運営は民間に?

 江東区は湾岸エリア全体の街作りの中で、有明・豊洲エリアを「国際居住・観光ゾーン」と位置付けている。ロープウェーは観光という言葉から連想したものだろう。実用的な乗りものであるだけではなく、眺望を観光の1つとしたいようだ。確かに、この地域は遠景に東京湾の夜景を眺望できる。新市場予定地の豊洲埠頭付近は殺風景だけど、市場の完成とオリンピック施設建設後は沿線の景色も良いかもしれない。

 さらに南の東京湾ゲートブリッジからは富士山が見えるから、ロープウェーの高度によっては、富士山と東京タワーを一望できる位置でもある。問題はこの地域を結ぶ交通手段として既にゆりかもめがあり、競合が懸念される。江東区案では具体的なルートは示されていないけれど、ゆりかもめの線路と離して、豊洲から南の東雲へ進み、東雲合同庁舎、東京有明医療大学を経由して有明へ向かうルートが良さそうだ。

 ただし、江東区案はここまで具体的な内容と実現性については触れていない。江東区長は記者会見で「江東区は金を出さない、民間にやってもらう」「オリンピック後も、銀座とか築地とか、その上をロープウェーで走ったら」「私なりの夢・アイディアに賛同、理解し、参加しようという事業者の出現に期待する」と語った。つまり、今のままでは「思いつき」レベルで、なにも決まっていない。もちろん、賛同する企業が現れたら、道路許可などの便宜は図ってくれそうだけど、要するに「他力本願」という印象だ。

 ちなみに中央区は2012年に「中央区総合交通計画」を策定している。この中で銀座駅と晴海埠頭、東京ビッグサイト方面を結ぶ連接バス方式のBRT(バス・ラピッド・トランジット)を構想していた。この案は2013年のオリンピック開催決定を受けて、東京都が引き取った。虎ノ門バスターミナル〜新橋〜晴海埠頭〜東京ビッグサイトを結ぶBRT計画へ昇華し、4月に基本計画を作成し、事業者選定と事業計画の策定の後、2019年年度から運行開始、2020年度からオリンピック大会輸送、2020年度以降は選手村跡の再開発に合わせた本格運行を予定している。江東区ロープウェーが同様の道筋をたどりたいなら、需要予測や費用概算を含んだ詳細な計画案が必要だろう。

 江東区は豊洲から住吉まで地下鉄を建設し、東京メトロ有楽町線を延伸させようという計画もある。こちらはもう少し具体的だけど、やっぱり東京メトロ頼みのプランだ。ただし、どんな計画にも「言い出しっぺ」は必要だから、江東区が積極的に交通行政に取り組み、新しいアイデアを生み出す姿勢は悪くない。実現したら楽しいことは間違いないから、興味深く見守りたい。

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