地下よりも空が最適? 都市型ロープウェーに注目だ杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)

» 2015年05月08日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


箱根ロープウェイは18人乗りゴンドラが1分間隔で運行する(出典:箱根ロープウェイ公式サイト) 箱根ロープウェイは18人乗りゴンドラが1分間隔で運行する(出典:箱根ロープウェイ公式サイト

 「箱根ロープウェイ」は神奈川県箱根町の早雲山駅と桃源台駅を結ぶ。途中の大涌谷駅でロープ経路が分かれているため、全区間を利用する場合は乗り換えが必要だ。また、桃源台駅と大涌谷駅の間に中間駅の姥子駅がある。一般にロープウェーと言えば2地点を往復する乗りものという印象がある。途中駅は珍しい。2つのロープウェーを合わせて1本の路線としているため、箱根ロープウェイは日本で最も長いロープウェー路線だ。

 ちなみに新聞社の表記は「ロープウェー」、箱根のロープウェーの運営会社は「箱根ロープウェイ」である。今回は一般用語として「ロープウェー」、路線名など固有の指定がある場合は「ロープウェイ」と表記する。

 箱根ロープウェイは1959年12月に早雲山駅〜大涌谷駅間が開業し、翌年9月に大涌谷駅〜桃源台駅間が開業した。現在のロープウェー施設は2代目に当たり、2002年に早雲山駅〜大涌谷駅間、2007年に大涌谷駅〜桃源台駅間が最新型のフニテル式になった。日本で初めてのフニテル式ロープウェーで、後に谷川岳や蔵王などで採用されている。

最新式ロープウェー「フニテル式」

 フニテル式は2本のロープでゴンドラを吊り下げる。2本のロープで支えるロープウェーには、1本を吊り下げ用、1本を移動用とする方式などもあるけれど、フニテル式は2本とも吊り下げと移動の役目を持つ。そしてロープの間隔がゴンドラの幅より広いという特徴がある。ゴンドラの屋根から4本の腕(懸垂機)が伸び、それぞれがバンザイするような形でロープをつかむ。

 フニテル式はロープが常に一定のスピードで動き続ける。しかしゴンドラは駅で停止できる仕組みだ。ゴンドラが駅に着くと、ゴンドラはロープから手を離しローラーコンベアで動く。駅を出るときは改めてロープをつかむ。ロープ間の幅が広く、懸垂機が短いため、横風に強いという利点がある。

箱根と同じフニテル式の谷川岳ロープウェー 箱根と同じフニテル式の谷川岳ロープウェー

 その最新式のフニテル式も火山には勝てなかった。2015年5月6日、箱根ロープウェイは全面運休となった。箱根山の噴火警戒レベルが2になったためだ。この地域の取り決めで、警戒レベル2の場合、箱根ロープウエイは桃源台駅〜姥子駅間のみ営業可能だ。

 ロープウェーが途中で折り返すなんて、構造上は無理だと思うけれど、じつは姥子駅には折り返しシステムがある。姥子駅の構造を見ると、ゴンドラと離れたロープはいったん駅の下を通る。ゴンドラは構内用のローラーコンベアで移動する。この区間にローラーコンベアの90度反転装置があり、ゴンドラは渡り線で隣のホームに移動できる。ただし、箱根ロープウェイがこの仕組みを使わなかった理由は、この装置を使った旅客営業の実績が無く、桃源台駅〜姥子駅間だけを運転する利点がなかったからだろう。

フニテル式のロープウェー駅。ロープ(左奥)を降りたゴンドラがローラーコンベアに移っている フニテル式のロープウェー駅。ロープ(左奥)を降りたゴンドラがローラーコンベアに移っている
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