ドライバーが監視義務を持たない自動運転となれば、異論はたくさん出るだろう。「クルマの直前に飛び出しがあって、回避できない事故で人が死んだ時には誰が責任をとるのか?」。もっともな疑問だが、実は人間が運転するより、自動運転化した方が交通事故そのものが減る。従って死亡事故も減る可能性が高いと考えられている。人間は、エラーを起こす生き物だからだ。
警視庁の統計によれば(参照リンク)、2014年の交通事故による24時間以内の死亡者は4113人。ヒューマンエラーによる事故が防げれば、4113人の犠牲者は半数以下、いやもっと少なくなると思われる。
同統計内では、3人以上の死者が出た事故11例について事故内容が説明されているが、これを見ると、対向車線へのはみ出しなど人為的ミスに起因するものが顕著に多い。この中で自動運転でも防げなかったと思われる事故は、大型貨物車が積載していた橋桁を対向車に落下させたものと、普通乗用車が走行中、路上の落下物を跳ね上げ、それが燃料タンクを突き破って炎上した2件のみ。それ以外の9例は、自動運転であれば回避できた可能性が高い。11件の事故の合計死亡者は35名だが、9件の事故の犠牲者である29人は、死なずに済んだかもしれないのだ。
ご存知の通り、事故の深刻度は速度が高いほど高くなる。そこで前述の警察庁の調査をうち、高速道路での事故を重点的に見てみると、2013年の高速道路での交通事故は全部で1万1520件発生しているが、このうち何らかの法令違反がない事故はたった391件。つまり残る1万1129件には何らかの違反があったということになる。
ではどんな違反があったのか? 208件の死亡事故の場合、48%が前方不注意、18.8%がハンドル操作不適、11.1%が最高速度違反となっている。実は790件の重傷事故、10522件の軽傷事故のどれを見ても前方不注意が最多で、40%を超えている。死亡事故と重傷事故では第2位がハンドル操作不適でそれぞれ18.8%と16.1%だが、軽傷事故では原因の第2位は動静不注視で25.2%。
さらに上記の違反以外の事故原因がブレーキ操作不適、安全不確認、その他となっていることから考えると、その他以外の全ての違反は全てヒューマンエラーなのだ。その他の内容は分からないので、何に起因するのか分からないが、つまりこういうことだ。
事故半減を期待できる根拠としてある程度の説得力はあるはずだ。
もちろん、自動運転技術がどれだけ高度なシステムになろうとも、完全に事故をなくすことはできない。しかし、何よりもまず交通事故の数を減らすことを優先すべきなのは言うまでもない。事故後の対応に関しては、自動運転時代の被害者救済の新しいあり方を構築すべきだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング