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» 2015年05月02日 09時00分 UPDATE

宇宙ビジネスの新潮流:21世紀の農業革新を起こせ 衛星技術ベンチャーの参入相次ぐ (1/2)

今後世界が直面する食糧問題の解決に向けて、宇宙衛星技術を使った農業の変革が進められている。その最前線の動きを紹介したい。

[石田真康(A.T. カーニー),ITmedia]

 以前、衛星を活用したリモートセンシング分野の活況について触れた。その具体的なビジネスモデルが見え始めてきたので紹介したい。対象市場は農業だ。21世紀の食糧問題解決に向けた農業技術の高度化の1つとして、衛星技術の活用が急激に進んでいるのだ。

衛星ベンチャーと農業関連企業が相次いで連携

 リモートセンシング分野で注目を集めている企業の1つは、超小型衛星ベンチャーの米Planet Labsである。現在までに71機の衛星「Dove」を打ち上げており、同一地点を1日1回以上、3〜5メートルの解像度で撮影可能な衛星システムを構築済みだ。2015年4月にも「シリーズC」として1億ドル以上を追加で資金調達するなど引き続き勢いは衰えていない。

 カタログ品、民生電子品の活用を進めた 「Agile development」などの衛星開発方法や衛星システムそのものに注目が集まることの多かった同社だが、2015年2月には今後の事業展開を見通す上で重要な提携を発表した。北米有数の農業化学メーカーである米Wilbur-Ellisと農業分野向けの地球観測画像を提供するという内容である。

 具体的には、Wilbur-Ellisが全米で事業展開している農業支援プラットフォーム「AgVerdict」向けに高頻度の地球観測画像を提供する。AgVerdictは、収穫量モニタリング、作付けマップ、農業記録などのサービスをクラウドベースで提供し、潜在リスクの把握・軽減や生産性向上を支援するソフトウェアプラットフォームだ。同社バイスプレジデントのミヒャエル・ウィルバー氏は今回の提携にあたり「高頻度の衛星画像は栽培業者の農作物生産の効率性や問題解決を加速する」と語る。

 同様の事例はほかにも存在する。米Farmlogsは急成長で話題を集めている農場向けデータ管理およびデータ解析ベンチャーで、既に全米50州で事業展開を行っている。同社は、天候や土壌、作物の健康状況、農業機械の状態などのデータを自動収集し、作付け計画策定、収益予測、営農スケジュール効率化などを支援する企業だ。その同社が2015年3月に衛星運用企業の米BlackBridgeと提携した。

 BlackBridgeが展開する全米規模の農業向け衛星モニタリングシステムを活用し、解像度約5メートルのマルチスペクトル画像および過去画像の提供を受ける計画だ。Farmlogsの共同創業者兼CEOのジョセ・フォルマール氏は「衛星画像も組み込んだ新サービス『Farmlogs Advantage』を提供することで、顧客が農作物の健康状態や生育状態をより理解できるようになる」と話す。

農業技術の高度化で食糧問題の解決につなげる

 このように米国で農業分野での衛星技術の活用が進む背景には、世界全体で1200億ドルにも上る農業分野の技術革新こそが21世紀の食糧問題を解決するための手段だという認識が広がりつつあることも一因と言える。

 例えば、米Googleのエリック・シュミット会長が共同創設者を務める米ベンチャーキャピタルInnovation Endeavorsが主導し、Google、化学メーカーの米DuPont、農業機械メーカーの米AGCO、ロボット企業の米3DRoboticsなどが参画して2014年に立ち上がった「FARM2050」というイニシアチブは好例だ(なお、Innovation Endeavorsは先述のPlanet Labsにも2012年以降投資している)。

 同イニシアチブでは、2050年までに96億人に達するという人口問題を解決するために、世界の食料生産量を70%増加させることを目指し、新しいAgTech(Agriculture×Technology)のエコシステム形成を支援しようとしている。技術ベンチャーに対して資金だけではなく、参加企業が専門知識やサプライチェーンなども提供するのが特徴だ。

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