富士通、今期は増収減益の見通し 「事業を見直し、ビジネスモデル変革の1年に」15年3月期通期決算(1/2 ページ)

» 2015年05月01日 07時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 富士通は4月30日、2015年3月期(2014年度)の連結決算(国際会計基準)を発表した。PC出荷台数の減少やユーロ安での部材価格高騰などから、売上高はやや減少したが、携帯電話・LSI事業の整理や円安の影響で利益は増加。当期純利益は前期比23.7%増の1400憶円となった。

 連結売上高は前期比0.2%減で4兆7532億円。営業利益は前期比21.3%増の1786億円。年間配当は前期と同じく8円となる。

photophoto 富士通 2015年3月期通期の連結決算

ソリューション系事業は好調も、ハードウェア関連事業で苦戦

photo 富士通 執行役員常務 CFO 塚野英博氏

 売上高の約7割を占めるテクノロジーソリューション事業の実績は、3兆3028憶円(前期比1.8%増)。サービス分野(SI、コンサルティング、アウトソーシングサービスなど)で、金融や公共系を中心に受注が集まったほか、円安を追い風に欧州の事業が堅調に推移し業績が伸びた。今期もマイナンバー関連などの大型案件に支えられ、さらに売上高が増える見込みだ。

 一方で、システムプラットフォーム分野(サーバやストレージ、ミドルウェアといったハードウェア一体型のビジネス)は苦戦しているという。IAサーバは好調ではあるものの、ユーロ安で部材費が高騰。特に携帯電話基地局や光伝送システムを含む、ネットワークプロダクト事業は、「LTE収容光伝送装置の導入が一巡し、通信事業者が投資を抑制している影響」(同社執行役員常務 CFO 塚野英博氏)から前期比で7.2%(246億円)減少した。

 PCや携帯電話といったプロダクト系ビジネスは、部材費の高騰に加え、出荷台数減が大きく響いた。ユビキタスソリューション事業の売上高は、前期比5.6%減の1兆628億円。PC、携帯電話については前期比11.3%減となった。「XPサポート終了による買い替え需要が終わり、法人向けPCを中心に出荷台数が減った。PCは2割、スマートフォンは1割程度減っている」(塚野氏)。

 それでも営業利益は356億円増加し、赤字から黒字に転換した。携帯電話事業について、出荷台数の調整や生産・開発拠点の集約、新機種リリースの絞り込みといった“構造改革”の成果が出たほか、モバイルウェア(カーナビ、オーディオなど)が北米で好調だったことが要因という。デバイスソリューション事業(LSI、電子部品)についても、マイコン事業を譲渡した影響などで減収となったが、円安で増益を確保した形だ。営業利益は前期比で2倍を超える369億円となっている。

 苦戦しながらも増益を達成した富士通だが、今期は増収減益となる見通しだ。2016年3月期の業績予想は、売上高が4兆8500億円(前期比2%増)、営業利益が1500億円(前期比16%減)、当期純利益については前期比26%減の1000億円としている。その理由について、同社 執行役員副社長(2015年6月に社長就任予定)の田中達也氏は「長期にわたる成長を実現させるための施策を打つことが、2015年度の最優先課題である」とアピールした。

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