だからリニアも? 名古屋都市圏は新しい乗りものがお好き杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)

» 2015年05月01日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

「桃花台新交通 ピーチライナー」

 ゴムタイヤを履いた車両でガイドウェイを走るスタイルで、AGT(オートメイテッド・ガイドウェイ・トランジット)方式という。東京の「ゆりかもめ」「日暮里舎人ライナー」、大阪の「ニュートラム」などが同じ仕組みだ。1991年に小牧市の桃花台ニュータウンと名鉄小牧駅を結ぶ桃花台新交通「ピーチライナー」が開業した。しかし実績は思わしくなく、赤字がかさんで2006年に廃止されている。起点と終点にループ線があり、列車は折り返しではなく、ループ線を通って向きを変えた。そのため運転台が編成の片側だけという珍しい仕組みだった。

 日本初の新交通システムは神戸のポートライナーだ。桃花台新交通の“日本初”は開業ではなく廃止のほう。乗客数が伸び悩み累積赤字が膨らみ、開業から15年で廃止された。名古屋圏は日本初の新交通システム廃止都市圏となった。新しいものが好きだけど、失敗も多い。いや、作ってみたけど赤字という路線は各地にあり、どうにか維持している事例もある。名古屋都市圏は、ダメだと思ったら見切りが早いといえそうだ。

 廃止の議論では「建設時の需要見込みが甘かった」「建設予定だった高蔵寺方面と接続せず不便だった」などの理由が挙げられた。私が乗ってみた感想としては、全線高架区間であるにもかかわらず、途中駅にエスカレーターやエレベーターがなかったことも遠因だろう。クルマを持たないお年寄りや通学生にとって、階段を上り下りするよりも、平行するバスで目的地へ直行したほうが楽だ。かけておくべきところにカネをかけなかったための失敗といえる。

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