グーグルやセレブもハマる、ベンチャー企業の“青田買い”はなぜホットなのか?新連載・来週話題になるハナシ(2/3 ページ)

» 2015年04月30日 08時00分 公開
[藤井薫ITmedia]

大手企業によるベンチャー企業の青田買い

 時代の先端をいくグーグルが、クリエイティブな人材を積極的にリクルートしているのはよく知られている。ただ、グーグルであっても、イノベーションと呼べるような商品やサービスをコンスタントに生み出すのは容易ではない。

 グーグル・フォー・アントレプレナーズが2012年に立ち上げられたのも、外部からの新しいアイデアを取り込むことを意識してのことだ。そして、駆け出しのベンチャー企業を発掘するイベントに活路を見いだそうとしているのだ。

 実際に、イノベーションは世界中で生まれている。Global Enterprenurship Monitorのレポート(2011年)によると、世界54カ国におよそ4億人もの起業家が存在しており、そのうちの6900万人が新しい商品やサービスを提供する駆け出しの起業家だという。それほど世の中にはビジネスアイデアがあふれている。グーグルにとっても、それを逃す手はないということだろう。

 大手企業によるベンチャー企業の青田買いは、シリコンバレーに限られたことではない。いま、特に注目されているのが、食品・飲料業界だ。グーグルが主催したイベントで優勝したマティ・エナジーもまさに、このトレンドを反映している。

 近年、食品・飲料業界ではベンチャー企業の投資が活発に行われている。記憶に新しいのが、2014年に米食品大手のゼネラル・ミルズ社が8億2000万ドル(約975億円)で買収した企業、「Annie's Homegrown(アニーズ・ホームグロウン)」。オーガニック系加工食品を製造するベンチャー企業で、人工香料や合成着色料、保存料などを使用していないオーガニックなマカロニ&チーズで有名だ。

「Annie’s Homegrown(アニーズ・ホームグロウン)」のマカロニ&チーズのラインナップ。「Shells & White Cheddar」が最初に発売され、最も売れているという

 ちなみに、アニーズ・ホームグロウン社のマーケットシェアは7%ほどだが、消費者が健康志向に傾いているため、このような小規模なブランドが急成長しつつある。そこにゼネラル・ミルズ社が目を付けたというわけだ。

 また、2014年にユニリーバ社が買収したベンチャー企業、「Talenti Gelato & Sorbetto(タレンティ・ジェラート&シャーベット)」も興味深い。米国のプレミアム・アイスクリームのカテゴリーで、第3位に君臨している有望株のブランドだ。ユニリーバ社の買収額は非公開だが、同社の売上高の12%を占めるアイスクリームカテゴリーを強化する狙いがうかがえる。

「Talenti Gelato & Sorbetto(タレンティ・ジェラート&シャーベット)」。従来の商品と違い、プラスチック製のスタイリッシュなパッケージが特徴

 Dow Jones VentureSourceのデータによると、食品・飲料関連企業へのベンチャーキャピタルによる投資は、2013年に米国だけでも6億7800万ドル(約806億円)になった。グローバルでの投資額は、15億9000万ドル(約1891億円)になる。さらに、2014年の上半期だけで、グローバルで11億ドル(約1308億円)が投資されているのを見ると、注目せざるを得ないトレンドなのが分かる。

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