「ハラル認証」手続きと運用体制の整えかた(後編)(3/3 ページ)

» 2015年04月30日 06時00分 公開
[企業実務]
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認証の種類と有効期間

 ハラルが適用される分野は多岐にわたり、製品だけでなくサービスなども対象だ。輸送、保管といった物流業から、ホテル業や金融業などにも及ぶ。そのため、認証機関によっては認証の種類を分けているところもある。

 例えばマレーシアでは、原材料や製造工程はJAKIMの規準で厳格に管理されてきたが、製品が工場を出てから店頭に並ぶまでの流通過程については規準がなく、自主管理に止まっていた。このため、2013年7月から物流認証として「運送(MS2400-1)」と「倉庫(MS2400-2)」が設けられた。

 昨年12月、マレーシア日本通運が日系物流企業として初めて物流認証(運送)を取得した。同社は、宗教洗浄でハラル化した車両4台を導入し、マレーシア国内でのハラル食品や化粧品などの輸送サービスを始めている。

 「認証がグローバル化する一方で、こうした細分化が進む可能性もありますが、日本の企業がすべてをマレーシア式にする必要はありません。どこで何をつくり、誰に売るのか。ハラル対応が付加価値になるなら、段階的に取り組まれるとよいでしょう。

 一般に、企業が認証を取得する場合、1つの認証機関と複数年の管理契約を結ぶことが多いようですが、ヤドカリのように更新のたびに契約機関を変えながらステップアップしてもかまいません。最初は規準が緩やかな認証を取得し、必要に応じて厳格なものに変えていけばよいのです」

 認証の有効期間は申請内容によって異なるが、渡航ビザなどと同様、出荷ごとに発給される1回限りの認証もあれば、申請時の原材料や製法が変わらないことを前提に数カ月あるいは1〜3年の有効期間をもつ認証もある。

 ただし、工場や店舗など契約場所のハラル性が維持されているかを確認するため、年に数回、抜き打ちで検査に来る認証機関もあるという。

 「ハラル規準に抵触する行為があれば、認証を取り消されるだけでなく、海外では法的な処分が下されることもあります。管理体制は周知徹底してください。もちろん、ハラル規準を満たしているかぎり更新は可能です」

 更新手続きは、多くの機関で期限1カ月前から受け付けている。初回よりも簡易な検査になるため、費用は低額で済む。ただし、原材料や製造工程などに変更があれば、初回同様の手順を踏むため同程度の費用になる。

国内企業のハラル対応

 従来、日本企業が認証を取得するのは、キユーピー、大正製薬、ポッカ、花王、資生堂といった、グローバル企業が東南アジア向けに商品を輸出する場合が多く、そのほとんどが現地申請だった。

 しかし、国内での認証が可能になり手続きの要件が緩和されたことで、それまで様子見だった国内企業にも動きが出始めている。

 例えば、都市部のホテルや国際空港の施設内レストランではハラル対応メニューを提供するところが出てきた。店頭には認証マークを掲げ従業員のハラル教育を徹底して、ムスリムの人たちが利用しやすいようにしている。

 また、百貨店や大型商業施設では、ムスリム向けの祈祷室の設置が相次いでいる。ホテルでは礼拝用のマットや衣装、メッカの方角を示すキブラコンパスを貸し出すところもあるほどだ。

 「農林水産省では、東京オリンピックが開催される2020年までにグローバルな食市場を開拓し、農産物・食品の輸出額を1兆円に倍増する計画ですが、その一環としてハラル対応への支援体制強化を打ち出しました。自治体によっては、設備投資に補助金が出るケースもあるようです。

 食品にかぎらず、海外でのメイド・イン・ジャパン人気は根強いものがあります。海外戦略の一環として、あるいは“おもてなし”の観点から、ハラル対応を検討してみる価値はあるでしょう」

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