「ラッスンゴレライ」の“あの噂”は本当? 都市伝説が囁かれるフレーズの共通点スピン経済の歩き方(2/4 ページ)

» 2015年04月28日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

根も葉もないデマカセ

ラッキーストライクのデザインをめぐって、さまざまな“噂”が流れた

 結論から先に言ってしまうと、これはまったくのデマカセである。

 ラッキーストライクが発売されたのは1871年。まだ日清戦争すら始まっていない状況でありゴールドラッシュに沸いた米国で、金脈を掘り当てた者が叫んだ「Lucky Strike!!!」が由来になっているらしい。また、今のパッケージになったのも1916年ということからも日の丸や原爆とは無関係であることは明白なのだ。

 にもかかわらずなぜこのような都市伝説が生まれたのかというと、いくつかの「反日イメージ」が重なって、それっぽいストーリーが組み立てられたと思われる。ラッキーストライクは戦後まもなく日本でも販売されたが、やはり高級な洋モクという位置付けだった。

 それがドカンと一気に国内に普及したのは1987年に関税が撤廃されたことだ。伊藤忠商事や住友商事という総合商社はこぞって外国産を取り扱い、「日本での外国たばこのシェアは、六十一年度の三・九%から、六十二年度には九・八%に急増。三千億円以上の市場となっている」(毎日新聞1988年6月2日)なんて報道もされた。

 そんなイケイケドンドンの外国タバコのなかで、“黒船”として国産タバコを脅かしていたのがラッキーストライクだった。日本のタバコよりカッコいいというイメージ戦略が展開されていくなかで、カウンターとして「反日都市伝説」が流された可能性は高い。

 折しもこの時期は、日本人の神経を逆撫(な)でするような“反日ネタ”も飛び込んだ。エノラ・ゲイ号の元パイロット・ポール・ティベッツ氏らが“原爆投下記念グッズ”を全米各地で売り歩いていることが分かったのである。

“最初の原爆投下”などの言葉が書かれたTシャツ九ドル、コーヒー・カップ六ドル、ビデオ十九ドル九十五セントなど。ティベッツ氏の本十四ドル九十五セントと、原爆のキノコ雲に爆撃機をあしらった絵二十四ドル九十五セントが一番の売り物(中日新聞1990/08/14)

 こういう米国人の「原爆商法」と国産商品を脅かす“日の丸柄”が結びついて、反日イメージが増幅していったというのは想像に難くない。

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