大阪経済圏でシェア伸ばせるか トモニHDと大正銀行の経営統合地銀再編

» 2015年04月16日 07時30分 公開
[ITmedia]

 この1〜2年で地方銀行の再編が加速している。背景にあるのは、市場金利の低下や人口減少による経済の縮小などだ。

 地銀の動向に詳しい日本総合研究所 調査部 主席研究員の吉本澄司氏は「地方では将来、全国平均を上回るペースで人口減少するとみられており、地域銀行の経営の安定化や地域経済の活性化に関する議論が強まっている」と説明する。

トモニHDは大正銀行を傘下に加えることで東部瀬戸内海圏の広域グループに トモニHDは大正銀行を傘下に加えることで東部瀬戸内海圏の広域グループに

 実際、2013年10月に東京都民銀行と八千代銀行の経営統合構想を発表し、2014年10月にる共同持株会社である東京TYフィナンシャルグループを設立した。2014年11月には鹿児島銀行と肥後銀行、横浜銀行と東日本銀行が相次いで経営統合に関する基本合意書を締結した(前者は2015年10月に、後者は2016年4月に持株会社を設立予定)。

 そして2015年4月10日、徳島銀行と香川銀行の持株会社であるトモニホールディングスと、大阪市に本店を置く大正銀行が経営統合を発表。トモニHD傘下に大正銀行が加わることで合意がなされた。この統合によって、新会社は主に四国から岡山、兵庫、大阪までをカバーする広域金融グループとなる。連結総資産は単純合算で3兆4262億9500万円(2014年12月末時点)、店舗数は193店舗と、第二地方銀行では上位に食い込む規模となる。

 今回の経営統合を専門家はどう見るか。吉本氏は「大阪という三大経済圏を地盤に持つ大正銀行をうまく生かせるかにかかっている」と述べる。

大阪など5府県における貸出金残高の業態別シェア(出典:日本総合研究所) 大阪など5府県における貸出金残高の業態別シェア(出典:日本総合研究所)

 一般的に、持株会社傘下のグループ化の場合には、銀行の地元色を残しつつ、複数の地域にまたがる金融グループとして発展を目指すため、合併よりは踏み切りやすいものの、グループ傘下の銀行同士の相乗効果が発揮できなければ、持株会社の下に元のままの銀行が連なるだけになりかねないという。

 一方で、大正銀行の本拠である大阪は、トモニホールディングスにとって「成長エリア」(同社)と位置付けている地域。また、大阪を含む5府県の貸出金残高の業態別シェアは、大手行が大幅に低下し、地元の地域銀行をはじめ他業態が上昇している。かつての業態別シェアは大手行が圧倒的で、残りを他の金融機関が分け合う形だった。昨今は大手の縮小が著しいこともあり、トモニホールディングスと大正銀行の経営統合はさらなる事業成長のチャンスが大いにありそうだ。

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