では、どのようにしてシステムの利用を促進しているのか。「まず何よりも重要なのは彼らの仕事を理解すること」だと関本氏は語る。
基本的にプロ野球球団のスタッフは1年契約の個人事業主。来年に自分がどうなっているか分からない。ライバル球団で働いていることも珍しくない。だから3年後、5年後といったホークスの将来を考えて全員の知見やノウハウを共有しようというのは通じない。「スタッフの流動性が高いこともあり、球団としてノウハウをためる文化がなかった」と三笠氏は振り返る。
そうしたスタッフの事情までもきちんと理解した上でコミュニケーションを取れるかどうかで対応は大きく変わってくる。ただし、もちろんシステム化する理由はスタッフの業務負荷を軽減するため。最初のコミュニケーションの壁を取り払えば彼らも納得してくれる。
「システムを活用すれば、面倒な作業がなくなり、本来の仕事である野球そのものに集中できる。そのメリットを繰り返し伝えていった。また、ナレッジ共有については懐疑的ではあるものの、今シーズン勝つために皆で何とかしようという思いは共通する。そのためにチームとしてのデータを蓄積する意味があることを訴えた」(関本氏)
三笠氏も以下のように続ける。
「スコアラーやスカウトなどには野球のプロでしかできない仕事をやってほしい。逆にそうでない仕事はシステムで自動化、効率化する。例えば、スカウトであれば、新聞やインターネットには決して出てこない有望選手のデータを収集し、スコアラーであれば、球速などの数値データではなく、投手の球筋を自分の目でじっくり見て、その投手の本質を掴むなど、そうした仕事をしてほしい。その時間をもっと作るためにシステムが日常業務を効率化する。きつい言い方をすれば、システムや野球好きの素人でもできるような仕事をしていたらプロとして厳しいだろう」
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