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» 2015年04月11日 09時30分 UPDATE

宇宙ビジネスの新潮流:米国だけではない! 70兆円市場を狙う英国宇宙ビジネス (1/2)

近年、官民一体で宇宙事業投資を加速しているのが英国だ。今回はその一連の動向をお伝えする。

[石田真康(A.T. カーニー),ITmedia]

 本連載ではこれまで、米国における“宇宙ビジネスビッグバン”と言える、民間宇宙ビジネスの活況に関して紹介してきた。今回からは他の国や地域における宇宙ビジネス状況にも触れてみたい。まずは積極投資を展開している英国の宇宙産業に焦点を当てる。

宇宙をニッチ産業からハイテク産業へ

 英国の宇宙産業といっても具体的なイメージが沸かない読者も多いと思う。古くは1962年、NASA(米航空宇宙局)と共同で人工衛星「Ariel 1」を打ち上げ、米国、ソ連に次ぐ世界で3番目の衛星保有国になった。その後1971年には国産ロケット「Black Arrow」で衛星打ち上げにも成功した。

 しかしながら、コスト高などでその後国産ロケット開発は中止。以来、衛星の打ち上げはNASAやESA(欧州宇宙機関)に頼ってきた。また、探査機などの開発も英国独自では行わずESAプロジェクトへの技術参加という形をとってきたのがこれまでだ。

 近年は宇宙産業を戦略投資分野と位置付けるようにスタンスが変わり、2010年に策定された「Space Innovation and Growth Strategy(SpaceIGS)」が転換点になった。同年には宇宙産業全体を統括するUKSA(英国宇宙庁)が発足し、2012年にはSpace IGSを踏まえUKSAが「Civil Space Strategy 2012-2-16」を発表。2013年には「Space IGS 2014-2030」として将来のアクションプランが提言された。

 SpaceIGSの中では、宇宙産業をニッチ産業から、メインストリームのハイテク産業へと転換させ、長期目標として2030年に4000億ポンド(約70兆円)と想定される世界宇宙産業市場で10%シェア獲得すること、中期目標として2020年までに英国宇宙産業を190億ポンド(約3兆円強)まで成長させることが設定された。そのために、高付加価値な宇宙利用産業の創出、投資を呼び込むための規制改革、中小企業への支援策の拡充、STEM(Science、Technology、Engineering、 Mathematics)科目の学力強化などが具体策として推進中だ。

世界をリードする小型衛星産業

 重視している1つの分野が小型衛星だ。従来、英国は人工衛星の設計や製造で大きなシェアを占めてきた。特に欧州最大の宇宙関連企業である欧EADS傘下の英Surrey Satellite Technology Ltd(SSTL)は、小型衛星分野の世界最大手の企業だ。同社は英国サリー大学で始まり、1981年にNASAの支援の下、初の人工衛星打ち上げに成功、1985年にサリー大学発の小型衛星ベンチャーSSTLとしてスピンオフ、2008年にはEADSに買収された。

 同社は、過去30年間に40機以上の小型衛星ミッションを成功しており、欧州の全地球測位衛星システム「Galileo」の測位衛星にも採用されている。同社の衛星は民生電子品を活用した低コスト設計、短期間開発、および地上設備の自動設計などが強みだ。地球観測分野は特に力を入れており、例えば重量100キログラムの小型衛星5機で地球観測を行い、災害監視や土地利用調査などを行うDMC (Disaster Monitoring Constellation)を発展途上国中心に構築してきている。

 また、衛星開発未経験国との共同開発および人材育成も主要事業だ。これまでにパキスタン、南アフリカ、ポルトガル、チリ、アルジェリア、ナイジェリアなどに対して15に上る国際トレーニングプログラムを実施しており、6カ国で宇宙機関が立ち上がるという礎構築に貢献しているのだ。

 英Clyde Spaceも有力な小型衛星コンポーネントメーカーだ。2005年創業の同社は、世界の小型衛星プロジェクトの約40%にハードウェアを提供しているとも言われており、売り上げの90%以上は英国外だ。今年3月には、200機の超小型衛星を活用した無償インターネットサービスを目指す米Outernetとの国際パートナーシップを発表した。同パートナーシップに対しては、UKSAが民間企業向けの支援プログラムである「International Partnership Space Programme」を通じて資金提供を実施するなど、民間宇宙ビジネスの先端事例として注目されている。

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