新天地でも“転校生”ではない、イチローのハイレベルな「EQ」赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)

» 2015年04月09日 08時00分 公開
[臼北信行ITmedia]

イチローのEQは高い

 イチローの英語力がハイレベルであることは意外に知られていない。イエリッチが「彼との会話に通訳は基本的に必要ない」と言うように、フォーマルな言葉だけでなくジョークを飛ばす際などにも必要なスラングに至るまで場の空気を読みながらキッチリ使い分けられる会話術がイチローには身についている。これは長いメジャー生活において第一線でずっと戦い続けて来ることができた証でもあるだろう。

 ワシントン州スポンケーンの名門校ゴンザガ大学でスポーツ心理学を学んだマーリンズのマイク・レドモンド監督によると、こうしたイチローが持つ“場の空気を読む力”を心理学の世界では「ソーシャル・インテリジェンス(社会的知能)」と呼ぶという。その世界においては通称「EQ」とも称される能力らしい。

 「ソーシャル・インテリジェンスとは『自身をどのように周囲と“接続”させていくか』を考えて実行する力。まず間違いなくイチローは人並みはずれた高いEQの持ち主だ。普通に考えれば、彼は今季からチームに加わったのだから周囲と溶け込むまでには相応の時間を要するはず。ところが彼はそうではなかった。

 スプリングトレーニング(春季キャンプ)開始から2〜3日もしたら、ほとんどの選手とまるで昔からの親友同士のようになっていたよ。分かりやすくいえば、学校の転校生がたった数日でクラスの古株になってしまうようなものだ」と同監督は驚嘆する。

 ちなみにイチローがメディア対応の際に通訳を必ず介して話をしているのは、彼の言葉を借りれば「日本人である以上、母国語でない英語で応じると自分の意図していることがうまく伝わらない可能性がある」からだ。

 たとえ英語力には自身があっても、自分の発言が不都合な形に曲解されて周囲に誤解を与えたくない。ひいては、それによってチームメートや関係者に迷惑をかけたくない――そういう風に考えて気配りができるところもイチローが高いEQを誇っていることの証明と言っていいのではないだろうか。もし、いわゆる“KYな人間”だったら、きっとここまでは考えられまい。

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