株式上場って何? 株式上場までに行われることマネーの達人

» 2015年04月07日 06時00分 公開
[荻窪輝明マネーの達人]
マネーの達人

 現在株式投資をしている、あるいはこれから株式投資を始めたい――また、上場企業への就職を考える就活生の人など、多くの人たちが日々何気なく上場企業と接しています。

 では、株式上場とは一体何でしょうか? そして、どのように行われるのでしょうか。

 日本の証券取引所で最大の東京証券取引所に上場している企業は、2015年2月末現在で3472社であり、386万社(2014年版中小企業白書より推計)ある企業数のうちごくわずかとなっています。

 その仲間入りを果たす新規上場企業に、目論見書(対象企業の情報が記載された書類)や新聞などを通じて、私たちは出会います。上場のステージにたどり着く会社は、それまでに大変な企業努力とさまざまな関係者の支援を受け、厳しい審査をくぐり抜けてその日を迎えます。

「上場」って何?

 「上場」とは新規上場や株式上場を指すことが多く、通称IPO(Initial Public Offering)とも言われます。

 これまで限られた関係者間でしか売り買いできなかった株式会社の株式を、市場というオープンな場所で誰もが売り買いできるようにすることです。簡単に言うと、「ある特定の人の企業からみんなの企業になった」ということです。

すぐに上場できるわけではない

 ある日、社長が「上場しよう!」と言ってすぐにできるわけではありません。通常、以下のようなスケジュールで上場準備が進められます。

 「期」は1年間に置き換えます。すると通常3年以上は準備期間が必要だということが分かります。また、この期間に上場企業にふさわしい業績や成長性、管理体制を備えていることが条件ですので、それが叶わなければさらに時間を要します。

さまざまな関係者の支援なくしては上場できない

 上場を目指す当事者である企業や各証券取引所のほか、次のようにさまざまなプレイヤーの支援が必要です。

 その他、メインバンクなどの金融機関、出資機関としてのベンチャーキャピタル、主幹事証券会社以外の証券会社(幹事証券)やコンサルタントなど、状況に応じた支援者が必要です。

 上場準備企業は、オーナー一族の保有する株式や資産の整理、規程と呼ばれる膨大な社内ルール作りを行います。また、経営を属人的な仕組みから組織にするために、職務の分離・役員間の監視など管理体制の強化を実現します。

 さらに、上場後に正しい決算資料を開示するため、会計のルールにのっとった決算書類作成と決算報告のスピードアップを図ります。いずれも支援者の協力なくしては実行できず、相当なコスト負担と準備期間を要します。

ハードルを乗り越えた上場企業はこれからも……

 上場すると知名度アップや社会的信用力の向上が期待されるとともに、販路拡大や人材の採用がしやすくなるなどのさまざまなメリットが見込まれます。時間とコストを十分にかけて立派な企業を作ることで信用力を高め、さらにコーポレートガバナンス(企業統治)の強化により企業経営の透明性を確保し企業価値を高めていきます。最近では上場するまでもなく有名な企業であっても、海外展開を優位に進めるために上場するというケースもあります。

 一方、当初見込んでいた業績予想を上場後すぐに引き下げるケースや、上場企業による不正や粉飾決算といった悪いニュースが出ていることも事実です。上場してからもさらに企業としてたゆまぬ努力をし、社会の公器として成長し、信頼を得つづけることが、上場企業に課せられた使命だと思います。(荻窪輝明)

著者プロフィール:

荻窪輝明

大学卒業後、証券会社に入社し、多くの個人・法人顧客から資産運用を中心とした相談を受ける。その後大手監査法人勤務を経て、コンサルティング会社にて法人オーナーの事業承継支援などに従事。現在は、会計監査、株式上場支援、税務相談に加えFPとして日々の生活に関するさまざまな相談を受ける傍ら、外部講演、書籍執筆を行う。日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」2014年相談員。

保有資格:公認会計士、税理士、CFP(R)、1級FP技能士、証券アナリスト、1種証券外務員、事業承継アドバイザー


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