1年未満で3モデル! ダイハツがコペンを増やせる理由池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2015年04月06日 08時30分 公開
[池田直渡ITmedia]
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2代目コペンは、10年以上作れるシステム

 おそらく、ダイハツはこの2代目コペンも10年以上作り続けるつもりだろうと思う。着せ替えボディの恩恵で、必要とあらば毎年新デザインを投入できる。クルマの売れ行きにデザインの占める割合は大きい。そこにトライ&エラーができるシステムを構築したことは、大変ユニークかつ意味のあることだろう。

 シャシー側の基本的な構造は十分なゆとりがあるので、コストが許せば機能追加も可能だろう。例えば2015年現在、軽自動車にも採用が進んでいる衝突軽減ブレーキなどは、まだコペンでは装備する予定がない。10年という長さで見ると、このあたりはもしかすると法的な装着義務ができるかもしれない。そうした対応をしながらコペンは長く作られるはずだ。というよりもダイハツはコペンを長く作り続けるためにこの大胆なシステム化を進めたと言う方が正しいだろう。

 ダイハツのコペンに対するスタンスはとても大胆かつ繊細だ。刹那的なものづくりが蔓延する昨今だが、ダイハツは「10年スパンでクルマを作るためにはどうすればいいのか?」を真剣に考えている。

 今回のように専用シャシーを新たに起こせば、当然開発コストがかさみ、損益分岐点は上がってしまう。長期回収を狙える盤石な計画がなければ、そんなコスト要求は承認されない。全社が一丸となって10年以上の継続生産に腹をくくれなければ、そういう決定には至らないだろう。

 ただし、長期間通用する新規シャシーを起こしてしまえば、その後ずっと利益が期待できるだけでなく、その間貴重な開発リソースを他に振り向けることができるようになる。物量作戦が展開できる体力があるのならいいが、ほとんどの自動車メーカーはそんなことができる状態ではない。ある種の悪循環であることはどこのメーカーでもわかっていながら、新車の賞味期限を考えると4年ごとのリニューアルが止められないのが現実なのだ。

 ダイハツは、初代コペンが売れた理由のひとつひとつを完璧に掌中に収めた自信があるからこそ長期計画が立てられた。そしてどうしても陳腐化するボディデザインのみをリニューアルしていくD-Frameのシステムがそれを可能にした。そこには、ダイハツというメーカーがこれからの時代にスポーツカーという少数生産モデルをビジネスプランに乗せて作り続けていくためのしぶとい戦略が伺えるのだ。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

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