ファウルボールでケガ→賠償 プロ野球界はどう向き合うべきか赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)

» 2015年04月02日 08時00分 公開
[臼北信行Business Media 誠]

事故の再発を防ぐ手立てを講じるべき

 今回の札幌地裁判決を受け、自民党の萩生田光一総裁特別補佐がスポーツ議員連盟のスタジアムや体育館の在り方に関する勉強会の席上で「ファイターズの訴訟は気の毒。(球団側に)免責条項とかをつくれないのか」と発言したのも、言うまでもなく約款の無効力化を懸念してのことだ。

 ちなみに米国のメジャーリーグは防球ネットやフェンスがあるのはバックネット裏だけで、内野席にはファウルボールを防ぐものが何もない球場が主流。だからスタンドでは「ファウルボールは飛んでくるもの」という認識を持ってグラブを手に観戦している人も多い。「せめて米メジャーのファンくらいの意識を観戦する側にはもってほしい」というのが、判決に承服できない姿勢を示した日本ハムを含めた日本プロ野球12球団の総意であり本音なのであろう。

 しかし果たして、それだけでいいのか。日本プロ野球界は至ってシンプルなことを忘れているような気がしてならない。いや、もしかしたらあえて目をつぶっていると言うべきなのかもしれない。まあ、どちらが真相なのかはともかくとして、12球団やNPBはもっと知恵を振り絞ってこれ以上の打球事故の再発を防ぐ手立てを講じるべきである。

 球界有識者の間では「打球の行方に注意を促す場内アナウンスや球場警備員の笛などの対策だけではまだまだ不十分。正直言って12球団やNPBは客とグラウンドの距離を近づけているメジャーリーグの例を参考にし過ぎるが余り、肝心の打球に対する安全対策が“おざなり”になってしまっている感があるのは否定できない」との指摘も出ている。

 集客数増加を狙おうと臨場感を出すために最近は内野席のフェンスの高さを下げたり、多くの球場で“ノーガード”のファウルグラウンドに特別席を設けたりするなど各球団が企業努力を重ねている。だが、そうすれば観客が打球に当たる確率が高くなるリスクも生む。こうした特別席ではどこも必ずヘルメットを着用することが義務付けられてはいるが、頭部以外でも強い打球が当たれば大きな事故になりかねないのである。

 参考までに説明しておきたいが、硬式球による打球が身体に当たった際の衝撃度は想像を絶するレベルだ。かくいう筆者もグラウンドでの練習取材中に何度かゴロの打球を当てられ、悶絶して球団トレーナーにその場でアイシング治療を受けた苦い経験がある。自分の時はいずれもゴロの打球だったが、これがフライ、ましてやライナーだったらどうなるか……。想像しただけで戦慄(せんりつ)が走る。硬式球を握った経験がない人は文章による表現では分かりにくいかもしれないが、それなりのスピードがかかった硬いボールは1つの「凶器」にもなりうるのだ。

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