シニアの不安は「お金」だけなのか 与えられた「10万時間」という恐怖お金もセンス(4/5 ページ)

» 2015年04月01日 11時20分 公開
[森永賢治ITmedia]

シニアの資産が早い段階で次の世代へ

 こうした現象を打破するべく「貯蓄から運用へ」のかけ声のもと始まった金融サービス(口座)が「NISA」(株や投資信託などの運用益や配当金を一定額非課税にする制度)である。2014年1月にスタートして、現在は700万口座を突破、短期間で順調な滑り出しを見せている。60代以上が6割を占め、買付代金ベースでも60〜70代が圧倒的に多い。そして2016年に「ジュニアNISA」(親や祖父母などがお金を出して、運用管理者として運用を行う。年間の投資上限額は80万円で、投資した年から最長5年間は非課税とされている)もスタートする予定だ。0〜19歳の口座開設も可能になので、子どもや孫名義で運用されるシニアも増えるだろう。つまりこれがうまくいけば、シニアの資産が早い段階で次の世代へ流れ、永久凍土を溶かす最大の武器となるのだ。

 このジュニアNISAは、もう1つ大きな役割を果たす。それは、シニア世代の存在価値アップに大きく貢献するのである。これまでは、遺産という形であくまで自分が亡くなった後に子どもや孫たちにお金が渡り、「おじいちゃんも私たちのためにこんなに残してくれたのね。本当にありがたい」と感謝されていたのだが、NISAやジュニアNISAだと、いわゆる生前贈与のようなもので、自分が生きているうちに子や孫に大いに感謝されるのである。

 シニアにとってこんなに嬉しいことはない。日本経済新聞社が行った調査(2014年11月)によると、子どもや孫がいるシニアのうち「お金の何に使いたいか?」という問いに「子や孫とのふれあい」と答えた人が72%、内閣府の調査でも「優先的にお金を使いたいと考えているものは?」の問いに「子どもや孫のための支出」と答えた人が33.4%もいた

 ちなみにビジネスコンサルタントの谷萩祐之氏があるコラムで「親にとって子どもへの支出は日常的な生活費、祖父母にとって孫に対する支出はいわゆる“はれ”の時の支出」と書かれていたが、なるほど、子と孫でもそういった意識の違いがあるのは面白い。

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