“火中の栗拾い”に立ち向かう――WILLER TRAINSの「京都丹後鉄道」に期待杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)

» 2015年03月27日 08時00分 公開
[杉山淳一Business Media 誠]

「火中の栗拾い」を「火消し」から始める

 観光客の誘致については、もちろん自社で展開するピンクのバスとの連携もありそうだ。黒部峡谷鉄道のように、乗客のほとんどがバスでやってくる観光鉄道もある。しかし京都丹後鉄道はピンクのバスとの連携よりも、北近畿タンゴ鉄道時代からのJR西日本との連携を維持、強化したい考えだ。鉄道の輸送力はバス1台の誘客よりもはるかに大きい。大阪や東京から夜行バスを1日1往復させるくらいでは、鉄道事業への貢献度は低い。

 観光需要を増大させたとしても限界がある。鉄道事業だけを頑張っても、鉄道だけのチカラでは収益改善は無理だ。そもそも沿線地域に鉄道を利用する人がいない。地域の過疎化やマイカー依存などが、ローカル鉄道存続の大きな壁になっている。従って、地方では鉄道は赤字で当たり前という状況だ。そのあきらめが北近畿タンゴ鉄道に閉塞感をまん延させてしまった。

 民間企業の地方鉄道に対する運営参加は「火中の栗拾い」という例えがピッタリだ。しかし京都丹後鉄道に対するWILLER ALLIANCEの答えは単純で明確だ。火中の栗を拾うには火を消せばいい。人がいないなら増やせばいいし、マイカーに依存しない町を作ればいい。いや、それはその通りだ。言うだけなら簡単。では具体的に何をするか。WILLER ALLIANCEは3つの柱を掲げている。「公共交通のみで暮らせる仕組みを作る」「若い人が働く場所を作る」「交通や街作りを教育する場所にする」だ。

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