飛行機は本当に「安全」なの? 現役パイロットに聞いてきた仕事をしたら“安全”に飛べた(7/7 ページ)

» 2015年03月25日 07時49分 公開
[土肥義則Business Media 誠]
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「時間」を気にしてはいけない

土肥: 船越さんはこれまで1万7000時間以上を飛んできた、いわゆる“ベテランパイロット”なのですが、危険なシーンに遭遇されたことはありますか?

船越: ないですね。危険なシーンではないのですが、気流などの影響で、飛行機が不安定なときには着陸を止めるときがあります。ゴーアラウンド(着陸をやり直すために再び上昇すること)をすれば時間がかかってしまうのですが、それでも着陸後には「自分の選択は間違っていなかった。ゴーアラウンドしてよかった」と思っています。

土肥: どういう意味でしょうか?

船越: 副操縦士として乗っているときに、気流が悪いときがありました。そのときの機長は必至になって着陸しようとしていたので、横で見ていた私は「このまま降りるんだろうなあ」と思っていました。しかし、それまでなにがなんでも着陸……といった感じだった機長が、いきなりゴーアラウンドしたんですよ。その切り返しの早いことにびっくりしました。と同時に「やっぱり機長は違うなあ。見習うべきだ」と思いました。

土肥: 着陸できるかどうかの基準がありますよね。風速○○メートル以上はダメといった感じで。

船越: もちろんあります。ただ、パイロットを長く経験していると「このまま降りてもいいことはないなあ」と感じることがあるんですよ。そう感じたら、仕切り直しをしたほうがいい。

 気流が悪い中で降りれば、ハードランディングになってしまうかもしれません。しかし、ゴーアラウンドすれば、気流の悪さを一度経験しているので、次に降りるときにはそれに対応することができるんですよ。

 ゴーアラウンドすれば、到着時間が遅れてしまう。そのことによってお客さまにはご迷惑をかけしてしまうのですが、それよりも「安全」に降りたほうがいい。「降りないほうがいいかな」と思ったときには、心の準備を整える意味でも、仕切り直しをする。そうした決断をするときに「時間」を気にしてはいけません。

(終わり)

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