インタビュー
» 2015年03月18日 08時15分 UPDATE

仕事をしたら“宇宙”に飛んだ(後編):人工衛星で写真が撮れるんですよ。えっ、それだけ? “営業活動”は苦労の連続 (1/4)

大学発のベンチャー企業「アクセルスペース」が、民間企業としては世界初となる商用の小型衛星を打ち上げた。しかし、そこに至るまでの“営業活動”は苦労の連続。どんなことがあったのか、同社の中村友哉CEOに話を聞いたところ……。

[土肥義則,Business Media 誠]

仕事をしたら“宇宙”に飛んだ:

 2013年11月。人工衛星の歴史に……いや、宇宙の歴史に……いやいや、ビジネスの歴史に新たな1ページが加わった(かもしれない)。東京大学発のベンチャー企業「アクセルスペース」が、民間企業としては世界初となる商用の超小型衛星を打ち上げたのだ。

 「人工衛星が打ち上がっただけでしょう? それだけでビジネスの歴史って、大げさな」と思われたかもしれない。確かに、大げさかもしれない。しかし人工衛星をどう使うかによって、これまでにないビジネスが次々に生まれるかもしれないのだ。

 アクセルスペースが飛ばした人工衛星は、気象情報などを提供しているウェザーニューズが北極海域の海氷観測に利用している。大きさは、一辺27センチ、重量は10キログラム弱。大型の人工衛星は重さ5トンを超えるので、同社のモノはとにかく小さい。

 NASA(米国航空宇宙局)やJAXA(宇宙航空研究開発機構)などが中心になってつくられている大型の人工衛星は、数百人の技術者が10年ほどの歳月をかけているので、価格は数百億円に達する。いわば国家プロジェクトなのに対し、アクセルスペースは10人ほどのスタッフが、1年〜2年でつくり上げる。人件費が安く抑えられるので、価格は1億〜2億円ほど。ちょっとしたお金持ちであれば「ヘリコプターを買うのを止めて、人工衛星にするよ」と言えるほどの“お手頃価格”なのだ

 牛丼チェーンを展開する吉野家の企業コンセプトは「うまい・安い・速い」。この言葉をアクセルスペースに当てはめると「小さい・安い・速い」といった感じ。そんな「小さい・安い・速い」人工衛星を宇宙に飛ばすことで、世の中はどのように変わっていくのか。同社の中村友哉CEOに話をうかがった。聞き手は、Business Media 誠編集部の土肥義則。

 →民間企業「アクセルスペース」の人工衛星が、ものすごく安い理由(前編)

 →宇宙からの画像で、どんなビジネスが生まれるのか(中編)

 →本記事、後編


中村友哉氏のプロフィール:

 1979年三重県生まれ。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。在学中に超小型衛星XI-IV、XI-V、PRISMの開発に携わる。

 卒業後、同専攻での特任研究員を経て、2008年にアクセルスペースを設立。2013年に世界初の民間商用超小型衛星「WNISAT-1」、続いて2014年に地球観測jビジネス実証用超小型衛星「ほどよし1号機」の打ち上げに成功。技術系ベンチャー支援団体「TEP」のアントレプレナー会員。


他ではできないことをやりたい

土肥: 子どものころに夜空を見て、「おー、人工衛星が見えた」という記憶がいまでも鮮明に残っているんですよね。でも、私のような凡人はここまで。驚いて、おしまい。でも、中村さんは違う。学生時代から人工衛星をつくってこられたということは、子どものころから「宇宙に行ってみたい」「宇宙に関係する仕事をしてみたい」といった夢があったのでしょうか?

中村: いえ、それが全くなかったんですよ。大学の研究室に入るまで「宇宙」には興味がありませんでした。高校時代までは化学が好きで、大学受験のときも学部は化学を選びました。しかし、入学してみると想像していたものと違っていました。「他ではできないことをやりたいなあ」と思っていたものの、なかなか見つからない。そんな悶々とした生活を送っていたのですが、3年生になる前に学科を選ばなければいけません。なにがいいのかなあと調べていると、たまたま航空宇宙に詳しい先生がいらして、ちょうどそのときに、大学初の人工衛星を打ち上げるというプロジェクトが始まっていました。

 先ほども申し上げた通り「他ではできないことをやりたいなあ」と思っていたので、人工衛星をつくることに興味がわいてきました。「人工衛星をつくるなんて、なかなかできなこと」と思って、その研究室に入りました。

土肥: そこからずーっと宇宙に携わっていらっしゃるのですね。

中村: はい。ただ、研究室に入ったときには「失敗したなあ」と後悔しました(苦笑)。

土肥: それはなぜですか?

中村: 先輩たちの会話を聞いていると、専門用語が飛び交っているんですよね。こちらは素人なので、全く意味が分かりませんでした。戸惑っていると「じゃあ、明日から実験をやるので、寝間着を持ってきてね」と言われました。その実験は2週間ほどかかるので「24時間シフトだから」とも言われました。

土肥: 「24時間シフト」は専門用語ではありませんが、その意味も分からなかった? (笑)

中村: はい。「24時間後に別の人が来るから」って……いまで言うところの“ブラック研究室”ですよね(笑)。しかし、そんな生活も3カ月ほどで慣れちゃいました。

土肥: そのころになると、専門用語も分かってきて、面白さが感じられた?

中村: ですね。

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