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» 2015年03月12日 08時00分 UPDATE

ITとデジタルが分離してきている、とは:日本企業が取り組むべき、マーケティングの経営課題とは?

世の中はどんどんデジタル化している。しかも企業よりも、お客さん側の方がデジタル化が進んでいる――多くの企業が実感しているこの事実にどう対応すべきなのか? 実はこれはマーケッターだけでなく、経営課題として取り組むべき大きな問題なのだ。

[吉岡綾乃,Business Media 誠]
ay_kmok01.jpg 一橋大学商学部 神岡太郎教授

 3月3日、マーケティングアプリケーションズ(2月1日にボーダーズより社名変更、参照リンク)は「マーケティングイノベーションセミナー」と題したセミナーを行った。

 冒頭に登壇した一橋大学商学部神岡太郎教授の講演は「日本企業が取り組むべき経営課題〜CMOからCMTOへ〜」。日本企業が今日、マーケティングにおいて取り組むべき課題について話した。

ITとデジタルが分離してきている

 「デジタルテクノロジーが生活や社会のあらゆるところに入ってきて、あふれてきている。これをどう企業の競争力に結びつけるかが重要になっている」

 今後IoT(Internet of Things、モノのインターネット)の導入がこの傾向に拍車をかけるだろうと説明。さらに「いま、企業においては、ITからデジタルが分離してきている。本来の意味とは別に、現実には意識的に2つの言葉を使い分けされるケースが増えてきている。(従来型)ITとは(従来、企業でSEなどが担ってきた)主に、コスト削減やセキュリティなどの内向きな施策のこと。一方、デジタルとは、価値を創造したりビジネスを成長させるために、外向き、つまり顧客や社会との関係を志向した施策のことを指す。今はこのデジタルの領域がどんどん大きくなってきている」と続けた。

ay_kmok02.jpg (従来型)ITとデジタルが分離してきている

 企業で伸びる「デジタル」の一例がデジタルマーケティングだ。米国では企業予算の10%くらいがマーケティングに、さらにその4分の1はデジタルマーケティングに使われており、どんどん金額は増えている。

企業組織は縦割りのままデジタル化している

 現在の企業におけるデジタル化の問題点として、神岡氏は「組織間で分断されたままデジタル化してしまった」という点を指摘する。例えば、部門ごとにそれぞれデータを取っていて、部門を横断して利用されていない、また、顧客とのチャネル(メール、SNSなど)がバラバラで統合されていない……といった例だ。

 また現在は、伝統的なマーケティングとデジタルマーケティングが分離してしまっている、とする。しかし目指すべきは、両者がもっと融合している姿だ。デジタルはこれからマーケティングと分離できないものになっていく。マーケティングとデジタルテクノロジーは不可分になっていくし、伝統的なマーケティングとデジタルマーケティングを一元化して動かしていけるよう、今後は企業規模で構造転換を進めなければいけない。

リーダーシップは変遷していく?

 どんどんデジタル化が進むユーザーに対して、企業はどう構造変換していくべきか? その一例として示したのがリーダーシップの変遷である。

 現在、企業においてマーケティングに責任を持つ人は「CMO(Chief Marketing Officer)」と呼ばれる。今日、米国のCMOが最も強い関心があるのは「マーケティングをどうデジタル化するか」。しかし現時点では、CMOが自社の伝統的なマーケティングをデジタル化するのは難しい。

 一方、企業で最もデジタルテクノロジーに詳しいはずの「CIO(Chief Information Officer)」は、企業ITを担当する責任者なので、インフラや基幹まわりのITから出られない。

 そのため最近では、マーケティングテクノロジーに精通している、CMT(Chief Marketing Technologist)と呼ばれる職位の人が必要になっている。CMTはデジタルマーケティングを担当し、CMOを補佐する立場と権限を持つ。ガートナーの調査では、米国の企業の約70%がCMTに相当する職位を持っているという。

ay_kmok03.jpg リーダーシップの変遷

 今後は企業におけるデジタルの重要性が変わるとともに、リーダーシップの変遷も予想される、とする。最近の調査では、広告予算の中でもデジタルマーケティング予算が伸びており、将来はマス広告の予算を超えるのではないかと見られている(英国など、すでにそうなっている国もある)。そうなると、CMTのさらに上、CMTO(Chief Marketing Technology Officer)が登場するのではないか。さらに将来的には、CMTOがほぼCMOと同等になり、経営判断に近いレベルまで行うようになるのではないか、と神岡氏は指摘する。

効果的なアウトソーシングが必要に

 「デジタル化というのは、狭い意味での『マーケティング』だけでいいんですか? ということです。例えばクルマだったら、クルマに乗っているだけでユーザーのデータがたまっていく。こうしたデータもマーケティングに使われるようになっていくのに、マーケティング担当だけがユーザーとつながるので良いのか? ということ」

 マーケティングが急激にデジタル化し、集まるデータ量や種類が飛躍的に増えると、自社のリソースだけではトータルに対応できなくなってしまう。

 マーケティングを効果的に企業で行うには、どうやってアウトソースするかが大事だ。データ解析ができる会社は増えているので、自社でできないところは外に頼むようにしないと、自社のリソースだけでは対応できなくなる。マーケッターにとっては、いかに効果的なアウトソーシングができるかが、マーケティングの効率、ROI、競争力に影響する、とした。

 マーケティングを効果的に企業で行うには、どうやってアウトソースするかが大事だ。例えば、マーケティングのデータ解析やデジタル環境の構築ができる会社は増えているので、こうした自社のリソースだけでは対応できない領域では、そういった外のリソースを上手く使えないかということになる。マーケッターにとっては、いかに効果的なアウトソーシングができるかが、マーケティングの効率、ROI、競争力に影響する、とした。

 「世の中はどんどんデジタル化している。しかも今は、企業よりも、お客さん側がデジタル化が進んでいる。企業がうまく対応するには、マーケティング+デジタルのリーダーシップ、アウトソーシングを考えなくてはならない」(神岡氏)

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