賛否両論ある楽天・大久保監督の「デーブ流儀」赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)

» 2015年03月12日 08時00分 公開
[臼北信行,Business Media 誠]

「憎まれ役」を買って出ていた

 それだけではない。「フォア・ザ・チーム」をベースとした強い犠牲的精神も人一倍に持ち合わせている。西武で渡辺久信監督の下で一軍打撃コーチを務めた2008年には、若手に「アーリーワーク」という名の早出特打ち練習を義務化させ、さらにデータ収集と分析を重視して選手に狙い球を指示するなど打線全体の底上げに成功してチーム日本一に大きく貢献した。

 そして同年の西武は渡辺監督の「寛容力」が主力選手たちの信頼を集めてチーム全体の大きな原動力ともなっていたが、これは裏事情を明かすと大久保コーチが「憎まれ役」を買って出ていたからである。

 「ガミガミとうるさいことを言う人間はチーム内に1人でいいし、そういう役目はボクがやります。監督が嫌われる必要はないですよ」というのが、当時の大久保コーチの考えだった。

 しかし、その翌年から大久保コーチが前記の不祥事によって編成担当に転属となると、途端に選手に対してガミガミと当たるようになった渡辺監督の求心力がチーム内で急速に低下。チームの主力の面々は「これまで単に大久保コーチが嫌な役回りを引き受けていただけで、監督の寛容力なんて最初からなかった」ことを見抜き、指揮官に対して一斉にソッポを向いてしまったのである。西武が2008年を最後にリーグ優勝から遠ざかっているのは、それとまったく関係がないわけではあるまい。

 2010年には西武で二軍打撃コーチとして現場復帰を果たしたが、菊池雄星投手への暴力行為が発覚し、それが理由で球団からシーズン途中で解任処分を受けた。当の大久保氏はこれに猛反発し、解任処分の撤回と名誉毀損に対する損害賠償金などを求めて西武側を提訴して争っていたが、後に楽天入りしたことで訴訟を途中で放棄している。しかしながら、この一件についても古巣・西武内で陰ながら大久保氏を擁護する声は決して少なくない。

 「デーブが雄星にふるったのはあくまでも“愛のムチ”。あの時は雄星にも行き過ぎた言動があり、デーブは『もういい加減にしろ』という意味でクギを刺すに至った。ただウチは親会社がコンプライアンスにうるさいから、世間の目を気にしなければならず“暴力”を“愛のムチ”だからと看過することはできなかった。

 さらに言えば、このころのデーブには『規律を守らない二軍選手たちに罰金を課して、貯まったカネを選手たちの飲み会の資金にしていた』というブラックな話も出ていたが、それも全く違う。実際に罰金制度を設けようと発案したのは当時ウチのチームにいた別のベテラン選手。デーブはそのベテランをかばおうと真相を話さず、あえて悪者になっていた」(西武関係者)

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