仁義なきマットレス戦争を制する次のキーワードは何か窪田順生の時事日想(4/4 ページ)

» 2015年03月10日 08時00分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]
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寝具類には「信仰」に似たところがある

 このような「点」や「反発」をめぐるし烈な戦いを見て改めて感じるのは、一見するとエビデンスに基づいて機能性を競っているように見えるが、実は「言葉」のもつイメージの争いになってしまっているのではないかということだ。

 もちろん、各メーカーが誇らしげに提示するエビデンスにはそれぞれ科学的根拠がある。NASAやら航空会社、病院に導入されている実績も伊達ではないことはよく分かる。一流アスリートたちの「睡眠が変わりました」という太鼓判にも説得力はある。

 その一方で、正直どこも似たりよったりの印象があるのも否めない。結局のところ最後は好みというか、「なんとなくこのマットならグッスリ眠れそうだな」という“インスピレーション”のようなものによって購入を決断するというユーザーも多いのではないか。

 ただ、これもしょうがない。「眠り」というのは脳と同様にまだまだ解明されていない未知の分野である。体に良いとか悪いとかいうのも日進月歩しているし、結局は当人の“思い込み”に左右されることも多い。極端な話、せんべえ布団で快適に眠れる人もいれば、数十万円の高級マットレスで不眠症になる人もいる。つまり誤解を恐れずに言ってしまうと、寝具類というのはまだまだ科学より「信仰」が占める割合が多いのだ。

 十数年前のマイナスイオンブームの時は、サンゴの粉がマイナスイオンを出すということで「サンゴ布団」が売り出された。怪しい業者などではなく、有名な国産メーカーだ。

 また、絶滅をしたと思っている人が多いが、いまだに布団を用いた訪問販売の被害が一定数ある。

 日本大学医学部内山真教授らの研究によれば、睡眠障害が日本経済に与えている損失は年間約2兆円にものぼるというし、睡眠市場が右肩上がりで成長していくのはほぼ間違いない。

 新たな「信仰」が生まれる余地は十分にある。どんな言葉で効果をうたわれても構わないが、人生の3分の1を過ごす場所なわけだから、せめていい夢がみれるものにしてもらいたい。

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