インタビュー
» 2015年03月03日 08時00分 UPDATE

ああ、絶望(後編):裁判官は優秀なはずなのに、なぜ“トンデモ判決”が出てくるのか (1/5)

認知症のお年寄りが電車にはねられた――。この事故に対して、第一審判決は、奥さんだけでなく、別居をしている長男にまで請求を認めた。こんな“トンデモ判決”が、なぜ出てくるのか。最高裁などを歴任した瀬木比呂志氏に話を聞いたところ……。

[土肥義則,Business Media 誠]

ああ、絶望:

 「裁判所」「裁判官」という言葉を聞いて、どんなことを想像するだろうか。「裁判官は公平な判決を出さなければいけない。なので裁判官は誠実な人ばかり」といった感じで、全幅の信頼を寄せている人も多いだろう。

 残念ながら、現実は違うようだ。最高裁事務総局民事局付などを歴任した瀬木比呂志氏は「国民の期待に応えられる裁判官は、今日ではむしろ少数派。また、その割合も少しずつ減少している」と言う。彼の指摘が正しければ、あなたは“トンデモ裁判”に巻き込まれて、今後の人生に絶望するかもしれない。

 裁判所は中立、裁判官は優秀――。そのように信じていた組織と人はどんな問題を抱えているのだろうか。現役時代、周囲から「エリート中のエリート裁判官」と呼ばれた瀬木氏に、ジャーナリストの烏賀陽弘道氏が迫った。前後編でお送りする。

 →エリート集団の裁判所が、「ブラック企業」と呼ばれても仕方がない理由(前編)

 →本記事、後編


プロフィール

瀬木比呂志(せぎ・ひろし)

 1954年名古屋市生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験に合格。1979年以降裁判官として東京地裁、最高裁等に勤務、米国留学。並行して研究、執筆や学会報告を行う。2012年明治大学法科大学院専任教授に転身、専門は民事訴訟法。著書に『絶望の裁判所』『ニッポンの裁判』(ともに講談社現代新書)、『リベラルアーツの学び方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2015年5月刊行予定)、『民事訴訟の本質と諸相』『民事保全法』(ともに日本評論社)など多数の一般書・専門書のほか、関根牧彦の筆名による芸術論や創作があり、文学、音楽(ロック、クラシック、ジャズなど)、映画、漫画については専門分野に準じて詳しい。

烏賀陽弘道(うがや・ひろみち)

 フリーランスの報道記者・フォトグラファー。1963年京都市生まれ。京都大学経済学部を卒業し1986年に朝日新聞記者になる。週刊誌『アエラ』編集部などを経て2003年からフリーに。その間、同誌のニューヨーク駐在記者などを経験した。在社中、コロンビア大学公共政策大学院に自費留学し、国際安全保障論で修士号を取得。主な著書に『Jポップとは何か』(岩波新書)、『原発難民』(PHP新書)、写真ルポ『福島飯舘村の四季』(双葉社)、『ヒロシマからフクシマヘ 原発をめぐる不思議な旅』(ビジネス社)などがある。


裁判所には“イエスマン”ばかり

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烏賀陽: 前回、裁判所の中には「上命下服、上意下達のピラミッド型ヒエラルキー」が存在しているという話を聞かせていただきました。最高裁の長官を頂点に、以下、最高裁の判事、高裁の長官……と続く。人事は上層部が握っていて、それ以外の人たちは「なぜ自分が左遷されたのか?」という理由すら分からない。なぜ分からないかというと、誰もその理由を言わないから。

 最高裁などで働いていた瀬木さんは、左遷される理由のひとつに「判決の内容」を挙げられました。判決の内容は間違っていなくても、上層部の気に入らない判決を書いたという理由で人事に影響する。裁判所には“自分の意見を自由に言えない”といった空気がまん延しているので、組織が硬直してしまっているといった話もされました。

 裁判所といえば「公平」「中立」のイメージが強いのですが、実態はかなり違うなあという印象を受けました。このほかにも、これをしたら左遷になるといった話がありそうですね。

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