ISILには欧米など外国からの参加者が多いことが知られている。ビデオにたびたび登場する覆面の処刑者(ジハード・ジョンというニックネーム)が英国なまりの英語を話すことが指摘されている。外国からの参加のきっかけがYouTubeやTwitterを使ったプロパガンダだというのも有名な話だ。
イスラム過激派がネットのWebサイトやチャット、BBSを使って若者をリクルートするのも、今に始まった話ではない。2001年のワールドトレードセンター事件の実行犯たちも、主な連絡手段はメールだった。
1990年台前半、私がコロンビア大学の大学院で国際関係論を学んだとき「国際政治における力=3つのM」という話を教わった。Money(経済力)とMilitary(軍事力)、そしてMedia(メディア)である。この3つをそろって持っているのが「超大国」だとも習った。確かに米国は経済、軍事、メディアで世界を制している。日本は経済は強いが、軍事やメディアは世界を制覇するような力はない。そんな話だ。
しかし、これはあくまで「インターネット前」の話である。インターネットが普及して、国力の3Mのうち「メディア」は国や大企業に限らず、誰でも持てるようになった。そして不幸なことに「誰でも」の中にはテロリストも含まれていた。
もともとインターネットは「貧者の武器」的な性格がある。資金や組織のない者でも影響力のあるメディアを持てる。情報力で「強者」と「弱者」を対等にしてしまう。パワーバランスを逆転させてしまうことすらある。
テロはもともと「情報戦」である、と先に書いた。残虐な行為をはたらいて世界に発信し、世論を沸騰させ、それで敵を撹乱すればいい。相手を不利に、自分を有利にできれば目的は達する。そのコストやリスクはどんどん少なくなっている。
「いつ」「どこで」「誰が」「どんな方法で」テロの被害に遭うのか、まったく予測がつかなくなってきた。これも、インターネットが開けたパンドラの箱、暗い未来図である。
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