ただ、実はこういう「砂糖は脳にいいですよ」キャンペーンは日本のオリジナルではない。「ビッグシュガー」と呼ばれる米国砂糖協会のロビー部門をはじめ、世界中の砂糖業界関係者があの手この手で「砂糖って意外とヘルシー」キャンペーンを展開しており、その影響力はWHOにも及ぶと言われているのだ。
だかが砂糖じゃんと思うなかれ、砂糖は鉄と同じで「国家事業」だった。大航海時代、西洋列強がいろんな国に乗り出した目的のひとつは、サトウキビでもある。サトウキビのプランテーションを維持するために奴隷売買をなかなか止めなかったのは有名で、「砂糖のあるところに奴隷あり」と言われる所以(ゆえん)だ。
こういう砂糖の“黒歴史”を振り返ってみても、やはり「砂糖は脳にいいですよ」キャンペーンは素直に見れない。先ほども申し上げたように砂糖産業で生計をたてる人たちもいるわけであって、納得感のあるキャンペーンならのっかりたい気もするが、「脳が欲しがってるんだからとらなきゃダメだろうが」という上から目線な感じがなんとも受け入れ難い。
ただ、そんなことを言ってもやはり砂糖の摂取を止められない。調理科学などに詳しい河野友美さんの『味の文化史』(世界書院)を読むと、砂糖の甘味は、塩味に次いで刺激が強く、順応度も高いので、繰り返し摂取することでより強い甘味を求めるようになっていくらしい。
言われてみれば、子どものころから甘党だったのだが、歳を重ねさらに強くなっている気がする。いい歳こいたオッサンになっても、まだシュークリームとかショートケーキを無性に食べたい時があるのだ。さらに言えば、普段何気なく飲んでいるコーラやスポーツドリンクにも実は山ほど砂糖が入っている。
どんなに「脳に良いですよ」キャンペーンに背中を向けても、すでに我々は“砂糖の奴隷”になっているのかもしれない。
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